- 塩津丈洋植物研究所 塩津丈洋・久実子
- 2010年、 植物の治療・保全を主とした塩津丈洋植物研究所が設立。
日本の山野草木を、知り・触れ・学び・育てる、体験型のwork shopの開催 ( 盆栽・苔玉 )。植物を生かした display や造園など、人と植物のより良い暮らしを提案している。
湯のみや茶碗が鉢に変身 「転用鉢」のテクニック【四季を楽しむ山野鉢】
和の植物の専門家・塩津さんと、身近な植物を育てながら豊かな暮らしをお届けする連載企画です。 今回は、身近にあるものを鉢に見立てる「転用鉢」の方法をご紹介します。ひび割れた湯のみや茶碗が、ひと手間でお気に入りの鉢に変身!
目次
愛着のある器が「植木鉢」に生まれ変わる
使い込んで欠けてしまった茶碗やひび割れてしまった湯のみなどが、どんな家庭にもひとつやふたつあるのではないでしょうか? 食事用として使うのは不安だけれど、愛着があって捨てるのはもったいない……。そんなときにぜひ試してほしいのが、今回ご紹介する「転用鉢」のテクニックです。
器の底に1箇所穴を開けるだけで、植木鉢として十分使用できます。
お気に入りの湯のみや茶碗を捨てることなく、形を変えて愛用できるのは、何とも嬉しいものですよね。
実は、こういった手法は、園芸が盛んだった江戸時代から行われていました。
はるか昔、庶民たちは湯のみや茶碗のみならず、香炉や花瓶など身近にあるさまざまなものを植木鉢として転用していたのだとか。
好みの鉢が見つからない場合にも、このテクニックを覚えておくと非常に便利です。
この世にひとつの斬新な鉢ができあがるかもしれませんね。
「ガラス用ドリル」と「化土土(けとつち)」が成功のポイント
転用鉢を成功させるには、いくつかのポイントがあります。
ドリルを使って穴を開けるとき、強い圧力に器が耐えきれずひび割れてしまうことが多いため、器への負担を最大限に減らす必要があるんです。
そういった失敗を防ぐには、以下の2つのポイントを守りましょう。
- 陶器用ではなく「ガラス用ドリル」を使用する
- 「化土土(けとつち)」を器のなかに詰めて、ドリルの圧力を緩和させる
陶器に穴を開ける場合、陶器用ドリルを使うのがベストだと思われがちですが、実はガラス用ドリルは陶器用に比べて歯が鋭く精巧に作られているため、器への負担が軽くなるんです。
さらに、充電式のコードレスタイプよりも電池切れが起こらないコード式がオススメ。
また、器の中に粘土質の化土土(けとつち)を詰めておくと、ドリルの圧力が1点にかかってしまうのを緩和してくれる作用があります。この2つのポイントを守れば、9割がたひび割れを回避することができるでしょう。僕がいろいろと試行錯誤したなかで、もっとも成功率が高かった方法です。
お家でレッツDIY! 転用鉢の作り方
転用鉢に必要なもの
転用鉢に必要なものは、以下のとおり。
今回は、シンプルな形状の湯のみを植木鉢に変身させます。工具を使いますが、DIY初心者の方でも大丈夫! 楽しく取り組んでみましょう。
❶ 植木鉢に転用する器 1つ
❷ 化土土(けとつち)適量
❸ ガラス用ドリル 1つ
※オススメは以下の2つです。
「ガラスドリル4枚刀 10mm GD-10F」新潟精機
「10mm無断変速ドリル 6412」マキタ
転用鉢の手順
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トレーに入れた化土土に水を含ませ、よく練ったら、湯のみの内側いっぱいに化土土を詰めます。
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湯のみに満杯まで土が詰まったら裏返し、湯のみの側面が土に埋まるようにしっかりと手で押さえます。
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湯のみの底面に水を溜めます。これは切削中のドリルとの摩擦熱を軽減するためです。
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底面の中央にドリルの刃を垂直に当てて、まずは低速回転で切削します。
※切削の様子は、この章のおわりに動画でも紹介しています。 -
ドリルの刃の接地面(湯のみの底面)に、時々水をかけ摩擦熱を冷ましながら、徐々に回転数を上げていきます。接地面が熱くなりすぎるとひび割れの原因になるので、なるべく頻繁に水をかけるといいでしょう。
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穴が開くと湯のみのなかから土があふれてきます。最後は空いている手で湯のみをしっかり押さえながら、穴を貫通させてください。
お気に入りの湯のみが味のある「植木鉢」に
このようにキレイな真ん丸の穴が開きました。これで一気に植木鉢っぽくなりますよね。
植物を植えると、こんな感じ。
シンプルな形が植物と調和して、なんとも味わいのある植木鉢に変身したと思いませんか?
今回使用したのは、もっとも穴が開きづらい磁器製の湯のみだったため、貫通までに15分ほどかかりましたが、陶器や底面が薄いものなら、短時間で簡単に開きますよ。
みなさんもぜひ、使えなくなった湯のみや茶碗を植木鉢に再利用してみてくださいね。
次回予告
爽やかで心地良い風が吹く10月は、どんぐりを使って「種からの植物の育成法」をご紹介。
お子さんと一緒にトライしてみるのも楽しいですよ。ご期待ください!
執筆・編集協力/小林香織
撮影/猿田祐樹