
- 塩津丈洋植物研究所 塩津丈洋・久実子
- 2010年、 植物の治療・保全を主とした塩津丈洋植物研究所が設立。
日本の山野草木を、知り・触れ・学び・育てる、体験型のwork shopの開催 ( 盆栽・苔玉 )。植物を生かした display や造園など、人と植物のより良い暮らしを提案している。
和の植物の専門家・塩津さんと、身近な植物を育てながら豊かな暮らしをお届けする連載企画です。今回のテーマは「庭採り(にわどり)」! お庭にある身近な草花を、可愛い鉢植えに植え替えて育てましょう!身近な植物に向き合う機会はお子さんにもおススメです。
目次
圧巻の姿を見せてくれた桜がシーズンを終え、いよいよ本格的な春の到来ですね。
先月お伝えしたとおり、春は植え替えのシーズン。この時期に合わせて、日本各地で植木市が開催されています。種類豊富な植物をはじめ鉢や資材まで、あらゆるものが手に入るうえに、職人から目から鱗の情報も聞ける、お得なイベントです。
でも、植物は購入しなくても、自然から採集することもできるんです。そこで今回のテーマは、身近な庭から植物を採集する「庭採り」。見慣れた植物を鉢に植えて、かわいく変身させる方法をお届けします。
▲今回庭採りをするのはこちら。我が家の庭です!
※国有林や私有地など、採集が禁止されている場所では絶対に行わないでください
まず、庭先でよく見られる一般的な植物をいくつかご紹介します。一度植えたら何年も楽しめる多年草の種類を集めました。
ヘビイチゴ
鉢に入れるとツルが伸びて育ちます。初夏に白い花が咲き、小さなイチゴを実らせる、見ていて飽きない植物です。
カタバミ
クローバーのような葉が愛らしく、暖かくなってくる春にはピンクや白のかわいい花が姿を現します。
ドクダミ
漢方に使われるなど、昔からなじみ深い植物。美しい白い花が咲きます。鉢以外に花瓶に生けて楽しむこともでき、切った直後は少々においがありますが、生けたあとはそれほど気になりません。
ギンゴケ
コンクリートの隙間や土の上などに現れ、もっともよく目にするコケです。盆栽などでも足元に使われる人気者。
ユキノシタ
今回、採集したのがコレ! みなさん、きっと目にしたことがありますよね? 日陰で群落を作り、5月頃には一面に白い花が咲きます。花びらが足元に散った姿が雪のように見えることから「ユキノシタ」と呼ばれるように。葉っぱは食用で、天ぷらなどにして食べられます。
それ以外にも、スミレやヒメツルソバもオススメです。
庭採りに出かける際に準備するものは、スコップとトレーだけ。さぁ、出発~!
庭をウロウロ散策すると、ちょうどいいサイズのユキノシタを発見!
植物の横からスコップを入れます。株の直径3~5倍、深さは2~3倍の根を掘り起こすのがベスト。
ユキノシタが採れました。大きさの目安はこれくらい。
トレーに入れて、乾かさないように持ち帰りましょう。
続いて、植え込みの手順をご紹介します。材料はこちら。
ユキノシタの根に付いた土を、株が崩れないように気を付けながら、竹箸でやさしく落とします。なるべく土をしっかり落とすのが、根詰まりを防ぐポイント。
これぐらい土を落とせば大丈夫。鉢に入らない太い根っこは、はさみで切り落としましょう。
鉢の底にネットをアルミ線で固定し、(方法は3月の記事を参照)赤玉土を敷いた土の上にユキノシタを入れます。
完全に根が隠れるまで赤玉土を入れたら、上から竹箸でサクサクと刺しましょう。根っこの隙間を埋めることで、しっかり定着します。
根本から水をたっぷりと注ぎます。鉢の底穴から水が出ていればOK。
最後に傷んで変色した葉や、穴が開いてしまった葉をはさみで切り、形を整えます。
切り落とした根や葉はこれぐらい。バランス良く仕上げましょう。
鉢に植えただけで、見違えるほどステキな姿になりました。太陽の日差しを浴びて、生き生きしていますね。
ボリュームたっぷりの丸い葉っぱと、ニョキニョキ伸びた紫色のツルで一段と華やかに。この姿が見られるのが、待ち遠しいですね!
植え込みが終わった直後は、強風を避け、やさしい日差しが注ぐ場所に置いてください。水は乾いたときだけたっぷり注ぎ、過度に与えすぎないことが大事。2週間ほどして新しい土に植物が根付いたら、東側に移しましょう。来年からは株分けをして、どんどん増やしていけますね。
※植え替えの手順は、こちらを参照。
執筆・編集協力/小林香織
撮影/猿田祐樹