- 石原たきび
- ライター。たき火。俳句。酒。
編著に『酔って記憶をなくします』(新潮文庫)。
https://twitter.com/ishihara_takibi
究極のDIY!? 東京都心で“手作り”のビルを建てている岡啓輔さんを直撃しました!(vol.2)
自らが住むための自宅ビルをDIYで建てている岡啓輔さん。場所は東京のど真ん中、港区三田。資材のほとんどはホームセンターで買えるものだという。ちなみに、着工は2005年だがまだ完成しない。植物のようにゆっくりと成長する建築物なのだ。周囲の人の反応は? 完成の目処は? 岡さんへのインタビュー第二弾です。
― 建築許可みたいなものは必要なんでしょうか?
関係機関に確認申請の書類を提出すればOKです。設計図も事前の申請が必要だけど、前も話したようにその通りになるわけじゃない。デザインが変わったらその都度、変更申請をすればいいんです。
▲思わず二度見してしまう建築中の「蟻鱒鳶ル(ありますとんびる)」
― 相当目立つ建物ですが、周囲の人の反応は?
応援してくれる人が2割、ちょっと煙たがっている人が2割、無関心が6割といったかんじでしょうか。この辺は学校も多いんですが、子供たちは「これは一体なんなんだ?」と思っているようで、僕のブログを見つけた子から「がんばってください」と言われたことも(笑)。「おお、がんばるよ」って返しました。
▲取材時は2階に上がる階段が鉄筋をつなげたものでした
― 正直に言って1人で建てるのは大変じゃないですか?
大変です(笑)。最初から1人でやろうと思っていたわけじゃなくて、結果的にそうなってしまったという。次に何か建てるときは大勢でワイワイ言いながら作業したいですね。
▲2階にも資材と機械がぎっしりと置かれています
― こんな発想を生み出す下地として、どんなお子さんだったのか気になります。
小学生の頃は近所の竹林や森の中に“秘密基地”をたくさん作ってました。子供の作品としては、そこそこのクオリティだった記憶があります。そう考えると、当時からセルフBルドの建築に興味があったんでしょうね。
▲岡さんにとっては、このビルも“秘密基地”なんでしょう
― 実際に建築を学び始めたのはいつから?
福岡県大牟田市の有明工業高専の建築コースに入学してからですね。卒業後は地元の住宅メーカーで1年半ほど会社員として働きました。
― そこを辞めて上京したわけですね。
はい。建築現場で働きながら、お金が貯まったら自転車で各地の建築行脚の旅に出るという暮らしです。なぜか写真に撮るのではなく、スケッチで記録に残していました。あの時の体験は自分の建築感に大きな影響を与えたと思います。
― 見れば見るほど不思議なビルですが、今回のように取材のオファーは多いんですか?
そうですね。態度が悪い人は断りますけど(笑)。あと、きちんとまとまった英語の記事もいくつかあるみたいで、2ヶ月に1回程度のペースで海外から視察に訪れる人たちもいます。
▲岡さんが指を向けるその先には…
▲コンクリートで型を取った古代ギリシャのような意匠
― ズバリ、完成予定は?
うーん、3年後ぐらいには完成させたいですね。完成したら妻と2人で住んでいる近所の賃貸マンションを引き払って移住します。この辺り一帯に大規模な再開発の動きがあって、それがちょっと不安なんですが。
▲こんなにも近いお隣さんとの関係は良好とのこと
▲「2階への採光用にしようかな」という穴
▲3階の隙間から見える聖坂の風景
― 変な話、建物の個性が強すぎて、これに合う家具などを揃えるのが大変そうです。
そのへんは何も考えてません(笑)。今あるボロい家具をそのまま運び込むんじゃないですか。実際に生活が始まったら、すぐに所帯染みてくるでしょう。
▲鉄筋を切ったり曲げたりできる「ベンダー付き鉄筋カッター」
― 最後に、DIYを楽しむコツを教えてください。
失敗してもいいから、とにかく作ること。今はインターネットで何でも調べられるし、大きなホームセンターもあちこちにある。昔よりかなり環境が整っていると思います。30年前だったら、こんなビル1人で建てられませんよ(笑)。
― ありがとうございました。完成したら、ぜひ遊びに来ます。
撮影:池田博美