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カルチャー
石原たきび

究極のDIY!? 東京都心で“手作り”のビルを建てている岡啓輔さんを直撃しました!(vol.1)

本棚、テーブル、ウッドデッキ。DIYでは様々なアイテムを作れますが、なんと1人で自分が住むための「ビル」を建てている男性がいるんです。しかも、東京都心の港区で。“三田のガウディ”とも呼ばれる彼の名前は岡啓輔さん。この究極のDIYに挑もうと思ったきっかけや実際の建築作業について、たっぷりとお話を伺ってきました。

次回― なぜ、このような壮大な試みに挑もうと思ったんですか?

ここの土地を買った時から、自然に「自分の家は自分で作るものだ」と思っていたんですよ。幸い、建築の知識はあるので。2005年に着工して、時々友人や学生が手伝ってくれますが、基本的には僕一人で作業しています。

▲都営地下鉄三田駅から徒歩数分。聖坂の途中に建設中のDIYビルが見えてきます。

― ビルの名前は「蟻鱒鳶ル(アリマストンビル)」だそうですが、その由来は?

候補はいろいろあったんですけど、最終的には古い友人が考えてくれた名前にしました。
蟻(あり)、鱒(ます)、鳶(とんび)と、陸、海、空が揃っているでしょ(笑)。

▲ビルの入り口で出迎えてくれた岡さん。

― 構造はどうなっていますか?

地下1階、地上4階です。正確な完成図はなくて、インスピレーションでその都度即興的にデザインしています。当初、竣工予定は2009年と言っていましたが、いろいろ誤算がありました。たとえば、1日にもっとコンクリートを打てると思っていたんですが、実際にやってみると予想以上に時間がかかって。

▲「蟻鱒鳶ル」の全貌。「バベルの塔」をイメージしているそうです。

― 土地はいくらぐらいしたんですか? こんな都心だと相当高いのでは。

広尾の不動産屋で建築条件付きで6500万円という土地を紹介されたんですが、法務局で調べてみると、バブルの時にとある企業が1億円で買った土地でした。実際に見に行くとビルを建てるには使い勝手が悪い土地。「売れ残っている」と確信したので、1550万円まで値切って現金で購入しました。

▲ビルの壁面。独特の意匠はすべてコンクリートを用いた手作りのもの。

― 購入資金は貯金から?

土地も建物も妻と折半しようという話になっていて、妻は自分の貯金から、僕は母親から借りました。

― それにしても、奥様はよく許可してくれましたね。

最初は「意味わかんない」と言ってましたよ。じっくりと時間をかけて洗脳していったんです(笑)。

▲1階の作業場。コンクリートの材料になるセメントが積まれています。

― 建築資材はどこで調達しているんですか?

セメント、水、鉄筋など、ホームセンターで大体揃うんですよ。砂利と砂だけは業者から買っています。セメントは25kgで500円ぐらい、砂利や砂はトラック一杯でそれぞれ1万円ちょいです。意外と安いんですよ。

▲余ったセメントは「何かに使えるかも」とペットボトルに入れて保管。

▲容器の形状がそのままビルの装飾になります。

― コンクリートの配合などにこだわりはありますか?

水セメント比、つまり水の量をセメントの量で割った値が37%。通常の建築用コンクリートは55〜60%なので、セメントの量をかなり絞っています。僕は「超ストイックコンクリート」と呼んでいるんですが、とある研究者から「このコンクリートは200年以上保つ」と言われました。

▲自慢のコンクリートに関する檄文もありました。

― そういえば、機械を動かす電力はどう賄っているんでしょうか。

ちゃんと東京電力と契約して購入してます。ほら、道路の向かいの電柱から電線が伸びているでしょう(笑)。

― おお、すごい。そんなこともできるんですね(笑)。

▲常識に囚われていてはいけないのです。

― まだまだ伺いたいことがあるので、次回に続きます。

わかりました。いったん作業に戻りますね。

▲まだ屋根のない3階で思いを熱く語る岡さん。

岡 啓輔(おか・けいすけ)

1965年、福岡県生まれ。20代前半で上京、建築現場で働きながら建築のイロハを身に付ける。30歳の時に一級建築士の資格を取得。敬愛するミュージシャンはRCサクセションの忌野清志郎で、偶然にも鉄筋によって補強されたコンクリートを建築用語でRCと呼ぶ。高山建築学校に生徒として20年以上通っており、2001年からは運営にも携わるようになり、自身で指導も行う。

蟻鱒鳶ル保存会

撮影:池田博美