- 流石 香織
- 雑誌編集を経て、2014年よりフリーランスのライターとして活動。Webのインタビュー記事、実用書を中心とした書籍などを書いています。ライフスタイルや美容、コミュニケーションのジャンルが得意。これまでのお仕事はこちら。http://ka-edit-it.jimdo.com/
「自分の取説を作って掃除・片づけ快適に!」お掃除オーガナイザー木村由依さん
気になる人物をクローズアップしてご紹介する『Pacomaコラム』。今回は、本誌でもおなじみの、お掃除オーガナイザー®木村由依さんにお話を伺いました。
掃除と片づけが苦手でも「できる」ようになる秘訣って?
『Pacomaコラム』では、Pacomaが注目する人たちをクローズアップしていきます。今回は、目からウロコのお掃除術を教えてくれる、お掃除オーガナイザー®の木村由依さん。
掃除と片づけが苦手な人でも「できる」ようになる、木村さん流アドバイスのヒミツは?さらに、木村さんがお掃除オーガナイザーになったきっかけや体験なども伺いました。
- 木村由依(きむら・よしえ)お掃除オーガナイザー®。女性専門のハウスクリーニング店「クリスタルミューズ」主宰。目からウロコのお掃除講座も定期的に開催中。
ハウスクリーニングの専門技術と米国の整理のプロの技術“ライフオーガナイズ”をベースに、整理・整頓・清掃・清潔・習慣の要素を取り入れたオリジナルメソッド、「クリスタル クリーニング メソッド」が評判に。
クリスタルミューズ公式サイト
掃除や片づけが嫌いなのは、快適な方法がわからないだけ
― 掃除や片づけが上手くこなせないのは、「正しい方法」をわかっていないからですか?
大事なのは、「自分」にとって正しいかどうか。誰にでも当てはまる正解はありません。それにはまず、自分自身の取り扱い説明書を見つけることです。私が学んできたアメリカ発の片づけ術である「ライフオーガナイズ」では、依頼主の「利き脳」を活かしたアドバイスを行います。
― 「利き脳」ですか?
右利きや左利きなど、手には優先的に使っている「利き手」がありますよね。脳も同じように左右どちらかを優先的に使う傾向があるため、それを「利き脳」と呼びます。利き脳には「右脳タイプ」と「左脳タイプ」があり、どちら寄りかを知る事で、自分に合った手法を導くヒントが得られます。
たとえば、「右脳タイプ」は感覚重視なので、綺麗になったことが五感でわかると気持ちよく感じます。その一方で、「左脳タイプ」は効率重視です。たとえ殺風景でも、使いやすさを優先して片づけようとします。
でも、ほとんどの人は自分の脳タイプを知りません。掃除や片づけが苦手だという人は多いですが、もしかしたらそれは、自分に合わない手法を選択しているだけかもしれないんです。
― そうなんですね! 掃除や片づけが苦手な自分は元々向いてないんだ、と思っていました。
たとえばお掃除の洗剤ですが、汚れの性質を知れば、簡単に落とせる洗剤がわかります。これも掃除が快適になるひとつの方法です。
感覚重視の右脳タイプの人には、「五感」を使って汚れが落ちたことを感じてもらいます。モノは汚れているとカサカサと音がして、綺麗になるほど音が小さくなります。その音を実際に聞いてもらうと、興味が湧き掃除が楽しくなるようです。
一方、左脳タイプの人は、好きかどうかよりも、効率よくできるかどうかが大事。正しいやり方が分かり、その裏付けがあると、納得し行動に移すきっかけとなります。「〇〇はどの位の頻度で掃除をすれば良いのですか?」と数値化したくなるのも左脳の特徴のようです。
掃除や片づけの悩みは、ゆっくり解決すればいい
― 木村さんは、掃除や片づけに昔から興味があったんですか?
子供の頃から、掃除でメンタルコントロールしていました。むしゃくしゃしているときって、好きな音楽を聴いても音が入ってこないんですよね。そんなときは、掃除や片づけをただもくもくとやります。片付け終わって部屋が綺麗になると、気持ちがスッキリするんですよ。
無意識にやっていましたが、実はこれってライフオーガナイズの視点で見たときに、理にかなっていました。
― ライフオーガナイザーの職業を選んだきっかけを教えてください。
もともとは営業職や、百貨店で販売員をしていました。人に喜ばれる仕事が好きだったので、30代半ばになったときに「もっと自分自身が納得できるサービス業をしてみたい」と考え、転職を決めました。しかしその当時、就職情報誌を見ても、興味を持てる職業がありませんでした。「自分には何ができるんだろう」と考えたとき、掃除と片づけが得意であることに気づいたんです。
そこから掃除や片づけについて真剣に調べはじめ、やがて2冊の本と出会いました。ライフオーガナイズとの出会いを綴った『モノとわかれる! 生き方の整理整頓』(岩波書店)と、掃除について書かれた『ホウキとヤルキ』(三五館)です。
― どういった内容の本なのですか?
『モノとわかれる! 生き方の整理整頓』には、上手に片づけられない著者が、アメリカのプロフェッショナルオーガナイザーからサービスを受けたことで生活が変わった話が書かれています。
掃除が人にどのような効果を及ぼすのかに興味があった私は、この本を読んだとき、「私がやりたい職業はこれだ!」と感じ、それがきっかけでライフオーガナイザーの講座を受けました。
もう1冊の『ホウキとヤルキ』は、トヨタ自動車の製造現場でも実際に使われ注目をされている「5S」についてわかりやすく書かれています。「5S」とは、「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」の頭文字を取ったもの。この本を読んで、「モノがどこにあるか」の仕組みを作ることは、生活にも役立つと知りました。そして、自分がやりたいことで喜んでくれる人がいる、と自信がつきました。
― ライフオーガナイザーの、どのような部分に惹かれたのですか?
お客様とのコミュニケーションを通じて仕事ができる部分です。
そのことを強く意識したのは、お得意様廻りをしていたときのこと。
経済的に豊かなお客様は、好きなモノに囲まれて幸せな人ばかりなのだと思っていました。しかしお客様の中には、片づける事がうまくできず荒れた部屋に住んでいる方もいらっしゃったんです。私はそこに、お客様のストレスを見たような気がしました。
なにか力になりたいと思ったものの、プライベートな悩みは、他人には相談しにくいもの。当時の私には、どうすることもできませんでした。
▲お掃除デモの様子
しかし、ライフオーガナイザーとしてであれば、片づけを通してお客様の悩み解決のお手伝いをすることができます。部屋の整理をするには、思考の整理が欠かせないからです。お客様は部屋の整理をしながら、自然と心の整理もできるようになります。
また、ライフオーガナイズでは、提案した方法がお客様に合っていなくても「できなかった」と落ち込ませるのではなく、別の方法を再度提案して一緒にやり直していきます。「正しい」やり方の提案ではなく、その方に「合う」方法を一緒に導き出すために、お客様と二人三脚で進めるお仕事です。
掃除や片づけの見方を変えれば、家族みんなで気分よく過ごせる
▲お掃除講座の様子
― 「掃除や片づけは主婦の仕事」と、負担に感じている人が多いイメージです。家族に協力してもらうためには、どうすればいいのでしょうか?
奥さまの掃除や片づけに対する考え方が変われば、家族みんなの考え方も自然と変わります。
よく、小さなお子さまのいるご家庭にパーソナルレクチャーで訪問しますが、奥さまに掃除の仕方を教えていると、お子さまも一緒に掃除したがります。子供は、親が楽しんでいると、すぐにわかるんですよ。さらに、やってみて快適にできることがわかると、ますます掃除が気持ちよくなって、お手伝いができるようになります。
また、週末のお掃除レッスンにはご夫婦で参加してください、と提案しています。男性は理論的にメソッドを説明すると、掃除に興味を持ってくれるんです。そのタイミングでさらに興味を引き出す言葉を投げかけると、ご主人の掃除に対するモチベーションがあがるので、奥さまには喜ばれます。
― 家族に片づけをお願いするとき、どう仕舞えばよいかがわからないお子さんや旦那さんが多いイメージです。
「モノの住所」を決めれば、誰でもスムーズに片づけられます。
片づけは小学校のグラウンドに似ています。小学校では、休み時間に1〜6年生までの生徒がグラウンドで遊びますよね。そして、授業のチャイムが鳴ると同時に、「何年、何組、何番」と生徒は自分たちの席に戻っていきます。
そのように、モノにも片づけるときに迷わない指定席が必要です。モノの場所を家族全員がわかっていれば、どこに仕舞えばいいのか、と奥さまにいちいち尋ねなくても、お子さまや旦那さまは片づけられるようになるんです。
― 掃除や片づけで家族仲まで良くなりそうですね(笑)!
家族は、必ずしも理想的なタイミングで、家事を褒めてはくれませんよね。ですから、自分の「取り扱い説明書」をつくって、自分自身を満たすことから始める事が大事です。
自分の機嫌を管理して余裕ができると、家族にも優しくできます。そうすれば、相手からも優しい言葉がかえってくるようになりますよ。