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暮らしの工夫
津久井 玲子

恥かき認定されないために!フランス料理の基本の食事マナー

フランス料理は専門店となると敷居が高いと感じる人も多いことでしょう。しかし、特別な記念日や断れない相手からのお誘いで困ってしまうこともあり得ます。フランス料理の基本的なマナーを身につけておきませんか?食事のマナーをまとめてご紹介します。

フランス料理の食事のマナーがわからない!

結婚式や断れない相手からのお誘いなど、不意なことでフランス料理で食事と聞いてどうしたらよいかわからないと困ったことはないでしょうか?フランス料理というだけでも食事のマナーが難しいというイメージが強く、敷居が高い高級料理と感じている人が多いものです。

 

それならいざという時のために、フランス料理の食事のマナーを学んでおきませんか?フランス料理は食事を始める前からさまざまなマナーがあります。しかしそれは席を同じくした人たちはもちろん、お店側にも気持ちよく対応してもらうための気遣いがあるためです。

 

フランス料理の基本的なマナーを習得するということは、フランス式の食事の場における気遣いのルールを身につけるということを指します。席を同じくした人同士、楽しく気持ちよく食事する、そのためのマナーをぜひ身につけましょう!

 

 

フランス料理店への入店前~入店時のマナー

フランス料理に限らず、会席する際にはいくつか気にかけるべきことがあります。食事の時間帯、食事する場所、席を共にする人、相手と自分の立場、食事をするのがどのような場合なのかを意識して、まずは服装から順に決めていきましょう。

 

服装

食事をするお店に事前に連絡を入れ、そのお店が意識している服装(ドレスコード)を確認して決めるのがおすすめです。スカートは膝上丈のものは避け、ストッキングを着用して素肌は隠しましょう。コートを着ていった場合は店に入る前に脱ぎ、片手にかけて入ります。コートのホコリなどを店内に持ち込まないためです。

 

店内で髪を触るのはマナー違反のため、触る必要がないようにきちんとまとめておきます。履物もサンダルやミュール、スニーカーといった物は避け、場にあった物を選んでください。

 

アクセサリー類は華美なものはもちろんのこと、ロングタイプのネックレスやブレスレットは、食器などに当たって傷をつけてしまったり、当たる時に出る音が周囲の人に不快感を与えたりする場合があるため、特にすすめられません。香水もつけすぎないよう注意しましょう。

 

荷物

席に持って行く荷物は、布製の小型のバッグに収めて用意します。バッグは椅子に座った時に背もたれと腰の間に置くようにするため、大きすぎないものを選びましょう。底に鋲がついたバッグの時は、座って左側の足元に置きましょう。

 

もし大きな荷物を持っていかざるをえない時には、入店時にクロークに預けるようにします。もし、手荷物が大きなバッグのみの場合、店に相談することで置き場は用意してもらえますが、荷物が周囲の人々の邪魔になることは間違いありません。そのようなことを防ぐために、サブバッグとして小さいバッグを常に持ち歩くと安心です。

 

バッグの素材にも気を配る必要があります。お祝いのめでたい席に、悪い印象をもたらす素材のバッグは控えましょう。代表的なものとしては、殺生をイメージさせる爬虫類系や牛など、皮や毛皮を使ったバッグは避けた方が無難です。

 

席順

席には上座と下座があります。上座は通常目上の人の席です。人を招いた時にはゲストも上座となります。友人同士など特に誰が目上というわけではない場合には、女性が上座に座ることになるので覚えておきましょう。

 

上座は店の構造にもよりますが、通常出入り口から一番遠い席です。オープンのテーブル席でも、個室でも変わりません。もしどの席が上座かわからなかったら、店の人が最初に引いた席が上座です。

 

ただし、必ずしも目上が上座に座らなければいけないというわけではなく、もし下座からの眺めの方が素晴らしいなどの理由があった場合、あえて相手に声をかけて意見をうかがうのもよいでしょう。

 

 

フランス料理でのカトラリーやナプキンのマナー

ナイフやフォーク、スプーンといった、食事の際に使う食器類をまとめて指してカトラリーといいます。フォークはそれぞれの面で呼び方があり、湾曲して盛り上がっている側が「背」、反対のくぼんでいる側が「ハラ」です。

 

フランス料理ではテーブルの上に、ナプキンのほかに取り皿の左右に多くのカトラリーが並んでいます。これらのカトラリーとナプキンの使い方にもマナーがあるので覚えておきましょう。

 

カトラリー

多くの人は右利きなので基本に忠実に持つだけです。ナイフは利き手の右に、フォークは背を上にして反対の左に、人差し指を軽く添えるようにして持ちます。左利きの人の場合は反対に持ってください。肩の力を抜いて自然な感じで持つと、見た目にもスマートです。

 

カトラリーは数が多いのでどれから使ったらよいのか迷いがちですが、基本的に外側から順番に使っていけば問題ありません。受け皿の上の小さいスプーンはデザート用です。使う順番を間違えてもギャルソン(店内のウエイターやウェイトレス)が補充してくれるので、慌てることはありません。

 

カトラリーの置き方は、ギャルソンへの合図でもあるので覚えておく必要があります。この時注意したい点は、ナイフの刃は常に自分に向けて置くことです。刃を外側に向けて置くと、相手に対して刃を向ける意味になってしまいます。刃の向きには注意してください。

 

覚えておきたいカトラリーの置き方は、少々ややこしい点もありますが2通りだけです。1つは今は食事休みをしているだけなので下げないで下さいという意味の置き方で、背を上に下フォークと、刃を自分の側に向けたナイフを「ハの字」に見えるような形に置きます。

 

もう1つはすでに食事は終わったので下げてくださいという意味の置き方で、フォークは背を下にしてナイフと並べ、例えるなら時計の4時の短針の位置に置いてください。それぞれの置き方でフォークの背の上下が逆になるので要注意です。

 

ナプキン

テーブルの上に置かれたナプキンを広げるタイミングも難しいものです。結婚式の披露宴などでは乾杯の後がよいといわれていますが、一般的に専門店で食事する時にはドリンク類を出された時がよいとされます。二つ折りにした後、折り目を自分に向けて太ももの上に置きましょう。

 

手や口を拭く時にはナプキンを使います。二つ折りにした下の面の左角を使い、そっと抑えるようにして拭きましょう。使った後に角を内側に折り込めば、汚れた面が見えることもありません。

 

食事の時には必ずナプキンを使うことがマナーです。持参したハンカチやティッシュなどを使うのは、店に対して「このナプキンは使えたものではない」という意思表示になってしまいます。周囲への気配りだけでなく、店側にも配慮して食事を楽しみましょう。

 

また、ナプキンは食事中に席を立つ時にも使います。ナプキンを軽くたたんで背もたれにかけるか、椅子の上に置くのが基本です。

 

ただし、席を立つにも御化粧室にいく場合はタイミングを間違えないようにする必要があります。御化粧室にいくならば、デザート前か会計前にしましょう。オーダー前と料理がテーブル上にある時はマナー違反です。離れる時には隣の人に御化粧室にいく旨を一声かけましょう。

 

食事が終わった後のナプキンは、あえて角を少しずらすように軽くたたんでテーブルの上に置きます。ナプキンはきちんとたたまないのがフランス料理のマナーです。なぜなら「料理が口に合わなかった」という意思表示になってしまうため、店に対して失礼になります。

 

カトラリーやナプキンを落とした時は?

カトラリーやナプキンを落としてしまった時は、ギャルソンに合図を送って拾ってもらいます。くれぐれも自分では拾わないでください。大きな声を上げるのは周囲の人の迷惑になってしまうため、アイコンタクトでサインを送ってください。

 

 

フランス料理の食事のマナー

フランス料理をいただく時に悩むことが多いマナーといえば、ほとんどは食事中のものでしょう。ここでは押さえておきたい基本的なことを細かく見ていってみましょう。

 

料理の食べ方

せっかく集まって食事を楽しむ上で、同席者に不快な思いをさせないためにも、食事中は極力余計な音が出ないよう気をつけましょう。カトラリーを使う時には特に注意が必要です。力を入れすぎれば音がたちやすいだけでなく、食器を傷つけてしまうこともあります。

 

また、フランス料理においてお皿の類を持ち上げるのはマナー違反なので注意してください。例外としてあげるなら、取っ手付きのスープ皿くらいです。また、料理を食べる時は一口分だけを左側から切り取るようにします。

 

魚料理や肉料理など、ボリュームのある料理が出てきたときに、先に切り分けることはマナー違反に当たる食べ方です。肉汁などが流れ出てしまい、料理の味も落ちてしまいます。常に食べる分だけを切り分けるように食べましょう。

 

コース料理が始まると、最初にアミューズと呼ばれる料理が出ることがあります。オードブルの前の店側からのおもてなし料理で、一口で食べられるものがほとんどです。アミューズは専用のカトラリーがないこともあります。その時は手づかみで食べて問題ありません。

 

料理は基本的に崩さないよう気をつけながら食べると上品に映ります。長さのある野菜を使ったリーフ系の料理は、フォークで抑えながらナイフでたたみ、一口で収まる大きさにしてからいただきましょう。

 

魚料理・肉料理は、素材が持つ筋繊維などの筋にそってナイフの刃をすべらせると切り分けやすいです。付け合わせだけが残ることのないように、バランスよく食べきるようにしましょう。

 

肉の焼き方を聞かれたら、「レア」「ミディアムレア」「ミディアム」「ミディアムウェルダン」「ウェルダン」の中から選びます。後になるほどしっかり火が通った焼き方です。好みがわからない場合には「ミディアム」か「ミディアムレア」を選択すると間違いを避けやすいでしょう。

 

スープの飲み方

フランス式のマナーの場合、スープは奥から手前にすくいます。左手はテーブルの上が正式。ほかでよく紹介されているイギリス式では、フランス式とは反対で手前から奥にすくいます。左手もひざ上が正式。同席者がイギリス式の場合には、合わせても問題ありません。

 

スープが残り少なくなってきた時は、スープ皿の裏が相手の目につくのは不快感を与えるとされるため、左手で皿の手前を持ち上げて奥にスープを集めてすくいます。スープを口に運ぶ時は、吸い込むのではなく流し込むようにしていただいてください。

 

パンの食べ方

ギャルソンがパンを運んできた時にいただくのは2個までとし、後はお代わりで持ってきてもらうようにしましょう。一口分の大きさに手でちぎってから、バターなどをぬって食べます。バターを出席者と共有する店の場合、目上の人から順番に使っていくのがマナーです。

 

また、パンをちぎる際にパンくずが落ちてもそのままにしておきましょう。デザートの前などにギャルソンがパンくずを取り除いてくれる、「ダストパン」というサービスがあるので心配無用です。気になる時には先にお願いしてもよいでしょう。その時には「ありがとうございます」と笑顔で気持ちを伝えることも忘れてはいけません。

 

パンに関するマナーの中でも覚えておきたいことは、パン皿のない店もあるということ。それは「パンを直接置いても大丈夫なほどテーブルクロスは清潔にしてあります」という意味なので、テーブルクロスをパン皿そのものとして利用するのがマナーです。

 

また、パン皿の有無にかかわらず心掛けたいことがあります。食べかけのパンは切り口が相手に見えないよう、ちぎり取った側を常に自分に向けて置くようにしましょう。

 

チーズの食べ方

チーズはフロマージュと呼ばれ、もともとはデザートの一部でした。現在では独立し、メイン料理とデザートをつなぐものとして親しまれています。

 

最近では必ずあるものではなくなり、フルコースでも別料金を払って注文しないと出ない場合も増えました。それでもコースの中の一品として出てきた時のことを考えれば、マナーを覚えておいて損はありません。

 

フロマージュの番になると、ギャルソンがトレイにさまざまな種類のチーズをのせて運んできてくれます。通常は2~3種類を選んで取り分けてもらいますが、食べたい種類が多い場合には、頼んだ数に応じてギャルソンが大きさを調節してくれるのでお任せしましょう。

 

すでにお腹が満たされている場合には、失礼にならないよう配慮しながらお断りしても大丈夫ですが、せっかくのチーズを楽しまないのはもったいないです。あまりに目移りしてしまう場合には、ギャルソンに自分の好みを伝えて選んでもらうとよいでしょう。

 

チーズはナイフとフォークで切った後に、添えられているクラッカーやパンの上にのせて食べます。はちみつをかけたりジャムとともに食べたりしても、また違った味が楽しめるのでおすすめです。雰囲気を壊さないようなら、そのままチーズの味を楽しんでも問題ありません。

 

デザートとコーヒー

デザートが盛り合わせの形態で出てきた時には、味の薄い物から食べるか、手前左側から時計回りの順が基本の食べ方です。ただし、アイスクリームのように溶けるものが出てきた時は、溶けてしまう前に食べきります。焼き菓子が添えられている場合は口の中が冷たくなりすぎないように調節するためなので、口の状態に合わせて食べ分けましょう。

 

フルーツののったケーキなどは、あえてフルーツが最後にくるように食べることで、お皿の上に最後まで彩りが残って見えるのでおすすめです。

 

コーヒーはカップの受け皿であるソーサーは持たず、カップの持ち手を右手で持ち、カップだけ持ち上げて飲みます。コーヒーの持ち手が左手側にある状態で出された時は、右手で外側からくるっと回転させて右側に持ってくれば大丈夫です。

 

スプーンがカップの手前に置かれている場合はカップの向こう側に置いて、「これから飲みます」とサインを出しましょう。まずは砂糖もミルクも入れずに一口飲んで、出されたままのコーヒーの味がどのようなものか、味を加える前に確かめるのがマナーです。

 

コーヒーの味を確かめたら、砂糖やミルクを入れて好みに調節してください。砂糖はそのままコーヒーに落とすのではなく、スプーンにのせてコーヒーに沈めます。そうすることで、コーヒーがはねて周囲に飛び散る心配もせずにすむのです。

 

「普段からコーヒーを飲む時にはカップに左手を添えて飲む」という人は注意してください。もしいつもの癖のままに飲むと、「すでにコーヒーが冷めている」というサインになってしまいます。店側にも失礼なので手を添えずに飲むようにしましょう。

 

 

こんな所作もフランス料理の食事ではマナー違反

食事中やその前後にも、何気にやってしまう所作の中にマナー違反になることが混ざっていることがあります。例えば料理の写真を撮ること。キレイな料理についつい写真を撮りたくなる気持ちはわかりますが、店側に先に確認を取るのがマナーです。

 

また、食事中にスマホをいじっているのもマナー違反です。わざわざ店に出向いて会食をするのは、食事と会話を楽しむためであることを忘れてはいけません。同様に食事をシェアしたり、交換したりするのもマナー違反です。出された食事はきちんと残さず食べましょう。

 

特に日本人がよく間違えることに、パンでソースをぬぐって食べたり、スープに浸して食べることがあげられます。これはれっきとしたマナー違反です。特にパンをスープに浸すのは専門店でなくてもご法度なので、絶対にしないようにしましょう。

 

会話を楽しむ時にも注意が必要です。口に食事を入れたまま話してはいけません。もちろん人の悪口などは場の雰囲気を壊し、周囲の人に不快な思いをさせてしまいます。

 

離席時にナプキンやバッグをテーブルの上に置くのもマナー違反です。それぞれ所定の位置に置いて離れるようにしてください。

 

そのほかにも他の人のマナーばかりを気にしてしまうのも避けましょう。ほかの人の失敗ばかりを気にして、食事も会話も楽しめないのでは本末転倒です。口うるさくならない程度に教えてあげられるところは教えてあげて、後は相手に合わせて会話と食事を楽しみましょう。

 

 

おわりに

フランス料理のマナーは多岐にわたります。しかし、根底にあるのは人への配慮と食事と会話を気持ちよく楽しみたいという気持ちです。難しく考えずに気軽にフランス料理を楽しみつつ、マナーを学んでいってはいかがでしょうか?きっと楽しいひと時が待っているはずです!