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ガーデニング
河村ゆかり

美しい花や実も楽しめる!生垣のおすすめの樹種5選

「生垣」というと和庭のイメージが強いかもしれませんが、実は洋風のお庭にもぴったりフィットする「植物のフェンス」。花や実も美しい生垣におすすめの木と、その育て方のポイントをご紹介します。

美しいだけじゃない! 生垣は防犯・防火にも大活躍

生垣は、庭の草花にお似合いの背景になるだけでなく、防災・防犯にも役立ちます。常緑樹は防火能力を有し、火事の類焼を抑制。またとげのある樹種は、不審者の侵入を妨げるなど、防犯に一役買います。

 

生垣の役割・長所と短所

そもそも生垣とは、敷地の境界線に植えられた樹木による垣根のこと。いわば、「生きた木で作られたフェンス」です。生垣には、フェンスとしてのさまざまな効果があります。

まず「目隠し」。木が障壁となって通行人や隣人の視線を遮り、プライバシーを確保してくれます。目隠し目的の生垣を作る場合には、一年じゅう葉を絶やさない常緑樹を選ぶのがポイント。

昨今見直されているのは、生垣の「延焼防止」力です。常緑樹、特に水分をたっぷり含んだ大きな葉をもつ木の防火力は、高く評価されています。

そのほか生垣は、強風から庭や家を守る「防風」力、大きな音を和らげる「防音」力。トゲのある樹種は容易に敷地内に立ち入れないため、「防犯」力も期待できます。

また、生垣によって緑豊かな景観が望めることも、大きな利点です。自分の家にとどまらず、地域全体の緑化に貢献します。

木材や金属製のフェンスに比べ、初期費用が安く上がるのもよいところ。樹種の選び方・育て方によって、低くも高くも調整できるのも長所です。

逆にマイナス面は、生きた木だからこそ、剪定や病害虫対策が欠かせないこと。メンテナンスにある程度の手間がかかることは、木を植える前に覚悟が必要です。

 

生垣向きの樹木)シャリンバイ

シャリンバイ(バラ科)は強健! もともと九州の海辺などで自生も見られるほどで、潮風に負けず、夏の暑さにも耐性があります。

特記すべきは、排気ガスなど大気汚染に強い点。道路の緑地帯にもよく植えられることからも、その力が証明されます。

強さだけでなく、姿も美しいシャリンバイ。5~6月には愛らしい花をたくさん咲かせ、秋になれば青黒い実が美しい緑色の葉のアクセントに。

シャリンバイは半日陰でも栽培できますが、できる限り日に当てて育てるのがポイントです。枝が太くしっかり育ち、美しい樹形にまとまります。

シャリンバイは風通しが悪いと、カイガラムシが発生します。すす病を誘発するケースも多く、カイガラムシは見つけ次第駆除しましょう。

またシャリンバイは品種によって樹高が異なるので、苗木を選ぶときには要注意。「低めの生垣に仕立てたい」「目隠しにしたいから樹高が高めのものに」など、つくりたい生垣に合う品種を選んでください。

 

生垣向きの樹木)トキワマンサク

トキワマンサク(マンサク科 )の大きな魅力は、4~5月に咲く美しい花。細長い花弁が、リボンを束ねたタッセルのように見え、存在感抜群です。

赤花を咲かせる変種の「ベニバナトキワマンサク」も、生垣で人気の樹種。葉まで赤みがかり、花とともにグリーンの庭の差し色になります。

トキワマンサクは、もともと日本でも自生していた樹木。日本の風土によくなじんでおり、ビギナーでもわりあい楽に育てられます。

苗木は寒さに弱いので、寒風が直接当たらない日当たりのよい場所に植えるとベスト。冬は株元に敷きわらなどマルチングをしておけば、安心です。

トキワマンサクは成長が早く、枝がよく伸びるので、、花が咲き終ったら好みのサイズに枝をカットしましょう。

 

生垣向きの樹木)チャノキ

チャノキ(ツバキ科)は「茶の木」。日本茶の原料となるお茶の葉を収穫する木のことです。「チャノキを生垣にする」というと意外に思われるかもしれませんが、実はチャノキは生垣の条件にピッタリ。

チャノキはツバキのような濃いグリーンの葉がよく茂り、刈込にもよく耐えます。そのうえ樹高2mほどにおさまり、手入れしやすいのです。

チャノキは日向から半日陰でよく育ちます。寒風や霜で枯れ込む場合があるので、寒冷地での生垣は難しく、温暖地向きです。

チャノキの新芽は、お茶としていただくこともできます。お茶の芽を摘むタイミングは「八十八夜」がよいとされ、5月2日ごろあたりです。ただし、この時期に新芽の収穫をするとなると、10~12月に咲く白い花はあまり期待できません。

チャノキの花をたくさん咲かせたい場合は、新芽が出る前の4月頃に剪定をすませます。チャノキの花は、春に伸びた新芽につくからです。新芽の収穫をメインに考えるなら、花が咲いても取り除き、株を育てることに栄養を注がせましょう。

 

生垣向きの樹木)クチナシ

「香りも楽しめる生垣を!」と欲張るなら、クチナシ(アカネ科)がおすすめです。香りのよい花だけでなく、緑の葉をたくさん付け、美しい生垣を形成します。

クチナシの樹高は2mほどで、扱いやすいサイズ。生垣や庭木など個人宅にとどまらず、公園や街路樹にもよく用いられます。

クチナシといえば日陰で育つ樹木の印象が強いのですが、ある程度の日当たりが確保された半日陰が栽培適地。日当たりが悪すぎると、6~7月の花期を迎えても花が咲かないので要注意です。

また乾燥に弱い性質のため、水切れさせないよう育てるのがコツ。耐暑性は強いほうですが、株元までに夏の直射日光が届き、土が乾きやすい場所で育てるのは避けましょう。

 

生垣向きの樹木)サンゴジュ

サンゴジュ(スイカズラ科)は、「珊瑚樹」の名の通り、秋に珊瑚玉のような赤い実をつける常緑樹。光沢のある緑の丸葉との対比が見事です。赤い実からタネを収集し保管しておけば、翌年の3月頃、タネまきで増やすこともできます。

サンゴジュは、ちゃんと根付くと非常に丈夫な樹木です。大気汚染や潮風にも耐性があることから、公共施設や海沿いの公園などでよく植えられています。また耐火性に富んでいるうえ、萌芽力も抜群で目隠しに最適と、生垣用に向く樹木です。

サンゴジュは環境適応能力に優れ、いったん根付けば日陰でも生育可能です。やせ地に植える場合には、1~2月に寒肥をしっかりと施すと、枝の伸びがよくなります。

サンゴジュはとても生育旺盛。伸びた枝が目立ってきたら、年に2~3回、剪定しましょう。刈り込んでもまたすぐに芽吹きます。

 

おわりに

生垣は敷地の境界線だけでなく、庭の一部を仕切ることもでき、ガーデンデザインの要にもなります。ぜひお好みの樹種で、生垣作りにチャレンジしてみてくださいね。