
- 菅原さくら
- 1987年の早生まれ。ライター、編集、雑誌『走るひと』副編集長など。人となりに焦点を当てたインタビューや対談が得意。雑誌やWebメディア、広告・採用、コピー、パンフレットなどさまざまなものを書きます。
http://www.sugawara-sakura.com/
LINEで静かなブームとなっている“我が子スタンプ”をご存じですか? その名のとおり、我が子の写真を使ったLINEスタンプのこと。難しいツールを一切使わず、さくっと作ってさくっと使えるようにするコツをご紹介します。
毎日、さまざまな人との連絡に使うLINE。とくに楽しいのは、絶妙なスタンプのやりとりだったりします。
LINEのスタンプは誰でも作成・販売が可能。『LINEクリエイターズスタンプ』として、さまざまなユーザーオリジナルのスタンプが販売されています。
▲公式WebサイトのLINE STORE。タブから「クリエイターズスタンプ」を選ぶと、ユーザーの作った人気スタンプが表示される。
じつは、写真からでもオリジナルスタンプが作れます。LINE公式アプリ『LINE Creators Studio』を使えば、難しい操作は一切ありません。
そして、このアプリがリリースされた2017年5月以来、子どもの写真を使った“我が子スタンプ”の登録が増えている、とのこと。そういえば、友達もインスタにアップしてたな……私だって、息子のスタンプ使いたい! もう、作ってみるしかありません。
でも、オリジナルのLINEスタンプを使えるようにするには、審査を通過する必要があります。公序良俗に反するスタンプが頒布されてしまわないよう、中身がしっかりチェックされているのです。
では、どんなスタンプならOKで、どんなスタンプはNGなの? LINE株式会社の担当者の方に伺ってみました。制作の手順を追いつつ、よくある失敗ポイントをチェックしていきましょう!
目次
スタンプ作成の公式ガイドラインは、こちら。
https://creator.line.me/ja/review_guideline/
このルールに抵触していると、せっかくスタンプを作っても審査に通らず、いつまでたっても使えるようになりません。私の作ったスタンプも、ガイドラインの何かに沿っていなかったらしく、4回リジェクト(審査不合格)されました……。
とくに引っかかりやすそうなのはこちら。
1.2.会話、コミュニケーションに適していないもの
1.3.視認性が悪いもの(例:横長な画像や、8頭身キャラクターの全身など)
1.4.スタンプ全体のバランスを著しく欠いているもの(例:淡色ばかりのもの、単なる数字の羅列など)
1.7.スタンプ内の文字に誤りがあるもの
小さすぎる写真や多すぎる文字、下ネタなどのスタンプはNGとなります。手書きの文字を添えたりする場合は、誤字にも注意。ある程度のガイドラインを頭に入れておくと、スムーズに作れるはずです。
動物の着ぐるみでにこにこしていたり、ぽっこりキュートなお腹を出していたり……そんな子どもの“かわいさ”は、意外とルールを侵しています。「コスプレをしたもの、裸のお写真を使ったものは基本NG」とのこと。
3.2.暴力や子どもの虐待・児童ポルノを描くもの
3.3.肌の露出が多いもの
3.16.性的な表現を含むもの
といったガイドラインに抵触するようです。販売されているスタンプを見ていると、おむつ姿はOKの場合もあるみたい……。でも、どこまで肌の露出がOKなのか具体的なラインは非公表のため、避けておくのが無難です。
また、ブランドロゴや有名キャラクターの入ったお洋服も、商標権・著作権・特許権・意匠権などの関係でダメ。おもちゃやテレビ番組、有名な建物やオブジェなんかが一緒に写っているのも、第三者に権利があるのでNGです。
では、実際に『LINE Creators Studio』アプリで、使う写真を加工していきましょう。
▲写真を選んだら「なぞる」か「かたち」をチョイス。画面下部にチュートリアルが表示されるので、初心者でも迷わず作れます。
▲「かたち」は、○や♡、☆などの形に写真を切り抜く機能。細かい調整が要らないので便利です。
▲「なぞる」は、写っているもののかたちに沿って切り抜くときに。今回は、子どもの体を指でなぞって、切り抜く線を決めています。
▲アウトラインをなぞり終わったら、緑の点をタップして動かし、微調整。画面を拡大して、丁寧にやるのがおすすめです。
「スマホの画面に小さくしか写らないから適当でいいか」なんて思ってしまった私。幼いころからのおおざっぱな性格が、ここで出てしまいました。でも、いまは断言できます。
ト リ ミ ン グ 、 め っ ち ゃ 大 事 !!!!
▲顔周りを雑に切り抜いたので、なんか不自然な福耳みたい。周りに背景がちらちら見えているのも、しょっぱい仕上がり。
▲扉の下辺をまっすぐ切り抜かなかったため、扉が布団のようにも見える。
▲こちらは成功例。頭のかたちも自然だし、腕のやわらかい質感もちゃんと表現できました。
人物を切り抜くときは「輪郭をなぞる」ではなく「輪郭の1mm内側に線を引く」という意識でやるとキレイに仕上がります。スタンプの枠になる正方形にかかるときは、できるだけ線をまっすぐに。もちろん、ハンドメイド感を出したいときは、なんでもOKです。
切り抜いた写真を枠内の好きな場所に配置して、文字や飾りを入れていきます。写真全体にフィルターをかけたり、彩度や明るさの調整をするのも、このタイミングです。
「慣れたアプリでデコりたい!」という人もいるかもしれませんが、それはNG。
「アプリによっては、デコったものの販売を許可していないといった制約があるため、一律でリジェクトさせていただいております」とのこと。でも、LINE Creators Studioアプリでもペンの細さや色は自由に選べるし、フォントもたくさんあるので、加工に困ることはほぼありません。
▲オレンジの星は細いペンで、吹き出しは太いペンで手書き。そのうえに日本語フォントで文字を入れました。
▲英字フォントはこんなに豊富。このほかにも、まだあります。
オリジナルスタンプを実際に使うには、販売許可を得るための「申請」が必要です。自分が作ったスタンプでも、販売を開始してみずから購入しなければ、トーク画面で使えるようにはなりません。
ひとつの販売パッケージには、8/16/24/32/40個のスタンプを入れられます。販売価格は120円/240円/360円/480円/600円。
私は安くたくさん作りたかったので、40個/120円のパッケージにしました。さくっと作りたいなら、使用頻度の高そうな台詞を8個でいいと思います。
▲パッケージに入れるスタンプを選んだら、スタンプの名前や説明文を入力。英文と和文の両方を設定しなければなりません。価格もここで選択します。
スタンプの登録情報で気をつけることは、こちらの2つ。
■販売エリア
このスタンプを、どの国や地域から購入できるようにするか、ということです。身内で楽しむだけのスタンプなら「日本のみ」にするのがおすすめ。各国に独自のルールがあるため、販売エリアを広げれば広げるほど、審査基準が厳しくなってしまいます。
「たとえば、タイやインドネシアでは独自の文化があるため、スキンシップにフォーカスされたものや水着姿などがNGに。ほかの国では問題にならないスタンプが、審査に引っかかることもあります」(LINE担当者)
■公開範囲
通常のクリエイターズスタンプは、スタンプショップで検索が可能。新着スタンプのページや、ランキングにも表示されます。とはいえ、子どもの写真を使ったスタンプを、まるっきりの第三者には使われたくないですよね。そんなときは、販売登録時に「ショップ非公開」を選びましょう。
▲非公開に設定すると、ショップの新着やランキングに表示されなくなり、検索にも引っかかりません。
ショップ非公開で作ったスタンプを使えるのは、購入ページのリンクを知っている人のみか、LINEのトークでスタンプが送られてきた人のみ。友達や家族に使ってほしいときには、下記のような方法でお知らせします。
・購入ページのURLを送る
・スタンプの「プレゼント」機能を使う
・スタンプ購入画面から「共有」機能を使う
・トークでスタンプを使う(そのスタンプを相手がタップすると、購入ページに遷移する)
販売登録を終えたら、アプリから申請リクエストを送ります。「申請いただいているスタンプ数によって日数に変動はありますが、通常は2週間程度で審査が終わります」とのことでした。
内容に問題がなければ、そのまま販売&使用が可能。ガイドラインに抵触する内容が含まれていたりすると「リジェクト」されるため、スタンプの一部を差し替えて、また申請する必要があります。
……と、ここまでが一般的なスタンプ作成の流れ。
実際に私がスタンプを作り、申請したときは、こんなスケジュールになりました。
12/20 スタンプver.1申請 → 12/22 リジェクト
12/22 スタンプver.2申請 → 12/26 リジェクト
12/26 スタンプver.3申請 → 12/27 リジェクト
12/29 スタンプver.4申請 → 1/2 リジェクト
1/2 スタンプver.5申請 → 1/6 審査通過&リリース
そう、じつに5回もトライして、ようやく販売開始にこぎ着けたのです……!
申請~審査までは想像よりも早く、1~4日程度で返答があります。でも、どのスタンプがどのルールに抵触しているのかを具体的には教えてもらえないので、原因を自分で探す必要があり、修正に時間がかかるのです。
▲このように、公式ガイドラインから代表的なNG項目のみが抜粋されて届きます。
ただし、今後は問題のあったスタンプをピックアップできるよう、対応を検討されているとのこと。ここがクリアされれば、ぐっと作りやすくなると思います。
今回はガイドラインとにらめっこしつつ、1~2つずつスタンプを入れ替えて申請し、独自にNGスタンプを探ってみました。どうやらダメだったのは、こちら。
▲ディズニーに行くときに着せた某ダッフィー風の着ぐるみ。かわいかったのですが、コスプレに該当したようです。
▲「インスタ映え」という文言が、ほかのサービス名であるためNG。よく考えれば当然なのですが、流行語だったので気づきませんでした。耳つき帽子もダメだったのかも?
▲息子の名前を説明するときの常套句「榊原郁恵の『郁』です」。ダメ元で出したのですが、いくら漢字の説明とはいえ、やはり芸能人の名前はNGでした
▲肩が出ているくらいはセーフかなと思ったけれど、不自然な出方のため、左はNGだったよう。右のほうがむちむちと肉感的ですが、脚ならOKみたいです。
▲これは、よく見ると両鼻から鼻水が出てるんですよね。お行儀も悪いし「過度に不快、または粗野なもの」とみなされたのでしょうか。
▲ボールプールで、息子の頭にボールが降り注いでいるところ。コメントとも関係ないし「暴力や子どもの虐待・児童ポルノを描くもの」に抵触するかと思いましたが、このスタンプはセーフでした
できあがったスタンプを見ると、トリミングが雑なだけではなく、あっさりしすぎている印象。もっとペンで書き込みをしたり、文字数の多い台詞を入れたり、フォントに凝ったりしてもよかったなと思いました。
▲ようやくリリースできた我が子スタンプの販売画面。
▲お気に入りはこの「よきにはからえ」です。意外と使う場面も多い。
でも、我が子のスタンプを使うのは、想像以上に楽しい! 5年くらい前に買ったミサワのスタンプしか使わない夫が、ぽんぽん息子を送ってきます。私が先日31歳の誕生日を迎えたときも、親族や親しい友達が、こぞって息子の「Happy Birth Day」スタンプを送ってきました。
▲自分で作った息子のスタンプに祝われるのは、不思議な気持ち。
親バカ丸出しだし、そこそこ手間もかかるけれど、身内のやりとりが盛り上がること間違いなし。素敵な我が子スタンプができたら、ぜひ私にも送ってください!