- 藤岡みなみ
- ふじおか・みなみ/文筆家。暮らしの中の異文化をテーマにした『パンダのうんこはいい匂い』(左右社)が発売中。
藤岡みなみ|だらしなく仕事するためのDIY vol.99
文筆家・ラジオパーソナリティの藤岡みなみさんが、モノづくりに対してのあれこれをつづるコラム連載!題字ももちろん本人。かわいくも愉快な世界観に、思わず引き込まれちゃいます。今回は、だらしなく仕事するためのDIYについて!
- 藤岡みなみ
文筆家。暮らしの中の異文化をテーマにした『パンダのうんこはいい匂い』(左右社)が発売中。 - オフィシャルサイト
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なるべくだらりとした姿勢で仕事をしたい。
腰や首のためには背筋をまっすぐ伸ばして座ったり、時々立ったりするのが一番いいのだとわかってはいる。
わかってはいるものの、さらにバリエーションを追加させてもらえないだろうか。
たまに肩を回すのが大切なように、時にはだらしなくすることも心のストレッチとして有効、ってことにしたい。
具体的には、ソファでノートパソコンを使いたい。
デスクの前までたどり着く元気がない時がある。
スパッと休憩する勇気はないがまっすぐ座り続けられない時もある。
ソファに思いきり背をあずけて、脳以外はすべて休んでいるスタイルで仕事をしたい。
だけど膝にノートパソコンを置くと低すぎるし、ぐらぐらして文字を打ちづらいのだ。
ああ、ここにちょうどいいミニテーブルがあれば。
ベッドで朝食を食べる人のテーブルみたいなやつがいい。
ピクニックでお菓子と紙コップを置くような小さいやつ。
つまりノートパソコンが一台置けるくらいの、折りたたみのテーブルが欲しいと思った。
自宅にちょうどよさそうな素材がいくつかあった。
りんご箱、木板、有孔ボード、本棚の中板の余ってるやつ、折りたたみ式の整理棚。
これらを組み合わせればなんとかなる気がする。
DIYはこのようにパズルから始まることが多い。
りんご箱や木版を使ったら立派なものができそうだったけれど、むしろ今回はコンパクトで気軽なものを作りたい。
思案の結果、有孔ボードと折りたたみ棚のサイズ感がちょうどいいのでこの2つを組み合わせることにした。
だけど、どうやって取り付けよう。
ちょうどいいネジなどの固定器具がないか、ホームセンターに見に行くことにした。
作るべきか? 買うべきか?
店に到着すると、なんとそこに千円ほどのミニテーブルが売られているのを発見してしまった。
まさに私が求めていた、木製の折りたたみ式のミニテーブルだ。
ソファに座って太ももの上にこれを置いたらちょうど作業にぴったりのサイズ感だろう。
見た目もおしゃれでまさに理想通り。
千円ならそこまで高くない。
え、どうしよう。
DIYをしようとするときに必ず訪れるこの葛藤。
作るべきか、買うべきか。
自分で作れば必ず節約になるとも限らず、むしろ買った方が安くついたケースも多々ある。
それでも作るのか?
私のDIY魂が試されている気がする。
売り場で30分頭を抱えた。
ひとりごとをたくさん言いながら市販のミニテーブルをよくよく眺める。
かっこいいなあ。
いや、でもなあ。
じっくり考えているうちに小さな欠点が見つかった。
外枠の存在だ。ここにパソコンを置いたら、手首に外枠が当たって痛くなりそうな予感がする。
マグカップを置くのならきっと枠があったほうがいいけれど……。
悩んだ末に市販のテーブルは諦め、やはり自分で作ることにした。
DIYなら思い通りに設計できる。
留め具はネジ類ではなく、麻紐を使うことにした。
これぞ、有孔ボードの有効活用。
穴が空いているって自由度が高い。
穴に紐を通して編むように固定していく。
▲ 麻紐と有孔ボード相性いいかも。
見た目もナチュラルテイストに仕上がってかわいいかも。
市販品よりかっこいいとまではなかなか言えないけれど、あれこれ考えて作ったぶん、愛着はある。
愛着のため、それだけでもDIYには価値があるといえるかもしれない。
買おうか悩んだ時間も無駄ではなかった。
自分がなにを求めているのか、そこで細部が初めてクリアになった。
自宅に眠っていた素材をうまく活用できたという達成感もある。
いま、この原稿もソファにだら〜んと座りながら、手作りのミニテーブルを使って書いている。
使い心地は最高。
求めていたリラックス加減だ。
自分が少しでも楽になるためのDIYなら、いくらでも頑張れる気がしてきた。