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藤岡みなみ|漂白の儀式でリセットボタンを押す【思い立ったがDIY吉日】vol.81
文筆家・ラジオパーソナリティの藤岡みなみさんが、モノづくりに対してのあれこれをつづるコラム連載!題字ももちろん本人。かわいくも愉快な世界観には、思わず引き込まれちゃいます。今回は、DIYの欲求について!
- 藤岡みなみ
文筆家。暮らしの中の異文化をテーマにした新刊『パンダのうんこはいい匂い』(左右社)が発売中。 - オフィシャルサイト
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漂白の儀式でリセットボタンを押す
▲いちばん汚れてもいいのは白い服だと思う。
白い服ばかり着ている。
白い服が好きな理由はたくさんある。まず、光を反射してレフ板のような役割をして、顔をパッと明るく見せてくれること。
オンライン会議などでも、白い服を着ている時とそうでない服の時の差は一目瞭然だ。ありがたや、ありがたや。
また、白い服を着ているといつでも人間キャンバスになれる。
水で落とせるサインペンを手にした5歳の子どもが私の背中に惑星を描いたり、左腕にアリの足跡を描いたりする。
洗えば落ちるから何も気にならない。どうぞ、どうぞ。
私も自分の服の端に「16時までにメール」などとメモをすることがある。
そして何より、白い服はリセットができる。
汚れやすいかと思いきや、いちばん汚れても大丈夫なのが白い服なのだ。
そそっかしい私は、よくトマトソースやしょうゆや何かわからないものを飛ばしてはシミを作ってしまう。
▲どうしたらこんなに汚れる? でも大丈夫。
でもたまに漂白すれば、元の真っ白な状態に戻すことができる。
同じ理由から、ここ4年間ほぼ毎日白い靴を履いている。
漂白は、私にとって生活の中のひとつの儀式のようなものでもある。
毎日少しずつ汚れていった服や靴を、もういちど生まれたての白にする。
乾く頃には1月1日のような、新しいノートの最初のページのようなすがすがしさがやってくる。
いつでも白からやり直せる、という感覚は、家事を超えて私の生き方も照らしてくれている。
義母の工夫と かたつむりハウスのDIY
▲プランターはあればあるほどうれしいです。
地植えできる庭はないけれど、畑を諦めていない。
わが家のプランター菜園は絶好調だ。現在25個のプランターを運用し、主に夏野菜を栽培している。
菜園のランドマークとなっているのは、義母作のゴーヤ・スクラム。支柱を組み合わせて作った、野菜のジャングルジムのような構造物だ。
通常ゴーヤはどんどん支柱やネットに絡み付いてつるを伸ばしていく。
その長さは数メートル以上にもなり、ひと夏で立派なグリーンカーテンができるほどだ。
這わせられる壁もないし、プランター単体ではなかなか無理、できたとしても不安定で少しの風で倒れてしまうだろうと思っていた。
しかし義母は4つのプランターを四辺に置いて重りのように利用し、その上に支柱でやぐらをこしらえた。
こんな手があったのか。義母はいつも手持ちのもので工夫する。
あまりに立派なやぐらなので、私のきゅうり苗も参加させてもらうことにした。ここにちょうどいいジャングルジムがあるからのぼってごらん。
プランターを移動させると、翌日にはもうつるを巻きつけていた。成長によってどんどん形が変わる野菜のサグラダ・ファミリアである。
▲つるがのぼっていき、空中栽培のようになる。
最近、新しい家族が増えた。
雨上がりに出会った4匹のかたつむりだ。
図鑑で調べて居住空間を整えてやる。
かたつむりの家を作るのは人生で初めて。
わが家で育てたロメインレタスをちぎってごちそうすると夢中で食べた。おいしいよね、これ。
モニョモニョと口を動かして食む様子がかわいい。
エイリアンの赤ちゃんみたい。
いちばん食いしん坊の子は餌入れの器の中で眠っていた。
ロメインレタスを食べるとうんちは緑になる。
卵の殻も食べるのは意外だった。
かたつむりの背負っている殻が強くなるらしい。そういうことならばどんどん食べてほしい。
▲かたつむりの食事シーンに癒やされる。
かたつむりをまじまじと見つめるのは久しぶりで、ツノが4本あることにハッとした。
大触角と小触角があって、長い方に目がついている。
かたつむりの絵を描く時ずっと2本しか描いてこなかったけれど、これを機に改めたい。
逃げたいのか、必死に天井にのぼる子。それを止めようとしているのか、他人のうずまきにおぶさろうとする子。
かたつむりにも個性があり葛藤もある。
しばらくしたら心地よい場所を探して放してあげよう。
それまでに、自慢のプランター菜園の夏野菜も一緒に楽しみたいと思う。