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暮らしの工夫
津久井 玲子

手すりの高さはどのくらいが適切?種類ごとに解説

高齢化が進む中、高齢者でも自宅内を安全に動くため、手すりを設置する家庭も増えています。しかし実際に手すりを設置する時、その高さはどのくらいがよいのでしょうか?手すりの種類や設置場所によって、どのくらいの高さが適切なのか調査してみました。

手すりの役割

手すりは設置場所に合わせて、さまざまな種類があります。それぞれの種類ごとに役割は異なりますが、手すりを設置することで期待できる効果があることは間違いありません。

 

手すりは足腰をはじめ、体への負担を分散させてくれることから、筋力の低下や手足にしびれを感じているような方でも、バランスを取りやすくして歩きやすくしてくれます。

 

手足に不自由を感じている方だけではありません。中には視力が落ちてしまったり、暗がりを歩くのに不自由を感じたりしている方もいることでしょう。そのような方も、手すりにつかまることで歩きやすくなるのです。

 

また、手すりにはさまざまな種類があるように、日常の動作を助ける効果もあります。トイレにある手すりはその典型ともいえるものです。便座を中心とした動作の補助をしてくれます。筋力が衰えている方や動きに制限がある方にとっては、とてもありがたいものです。

 

同じように、廊下や階段にある手すりなどは、つかまって歩くことで転倒や転落を防ぐ効果があります。特に高齢者は、筋力の低下だけでなく反射神経の低下も避けられません。そのためバランスを崩しやすいだけでなく、体勢を立て直すのも大変になります。

 

手すりはこれらの危険を予防するのにとても効果的です。体に不安がある家族がいる家庭では、家の各所に手すりを設置しておくと安心できます。将来への備えとして、設置しておくのもよいでしょう。

 

 

廊下の手すりの高さ

廊下に使われる手すりの種類は水平型が一般的です。使い方としては、手すりを上から軽く押さえながら、手を滑らせるようにします。

 

通常、一般的な公共施設では、この種類の手すりの高さは75cmで設置されていることが多いです。参考資料の中に、「目安の高さは75cm」と書かれているためといわれます。そのため、公共施設では「手すりの種類の中でも、廊下に配置するものは75cm」としているのです。

 

しかし、実際にその高さの手すりを使ってみると、多くの方が低く感じるといいます。使う方の身長や身体機能に左右される部分も多いですが、高さの目安としては約75~85cmが一般的で、80cm前後が一番使いやすいとする意見もあるのです。

 

では細かく決めたい場合には、どのような基準があるのでしょうか?まずは、腕を下ろしてまっすぐ立った時の手首の位置がどこになるかです。さらに足の付け根の位置や、つえを使っているのならそのつえの高さも基準になります。

 

その結果が75~85cmの間になることが多いため、目安の高さとなっているのです。手すりの高さを決める時には、使いやすさを追求するためにもきちんと測って決めましょう。

 

 

階段の手すりの高さ

階段用の種類の手すりは、数か所でその高さを測る必要があります。理由は利用者が安全に階段を上り下りするためです。上り始めと上り終わった先の水平部分の長さや高さ、上る時に重心が適切な位置になる高さを、部分ごとに正確に測る必要があります。

 

まずは肝心の階段部分の手すりの高さです。階段の一番出っ張った部分の段鼻(だんばな)から垂直に測った時、手すりの高さが75cmになるようにします。すると、自然に階段を上る時に踏みしめる踏面(ふみづら)の中心では、手すりは約80cmの高さになるのです。

 

ただし、これはあくまで目安の高さのため、必ずきちんと使用者の身長や状態に合わせて調節しましょう。特に手すりは高すぎることがないように注意が必要です。なぜなら重心が後ろにずれてしまい、その状態で階段を上るのは危険をともないます。

 

また、階段に取り付ける手すりは、水平部分にも20cm以上長めに取り付けましょう。階段部分だけに取り付けたのでは、最初の部分でつかみそこなったり、最後までしっかりとつかめなかったりするため、転倒や落下の危険があります。高さも適切に調節してください。

 

壁が終わってしまうために延長部分が取り付けられない場合は、縦型の種類の手すりを取り付けます。体を最後まで引き上げることができるので、忘れないようにしましょう。

 

もう1つ注意したい点は、手すりの先端の形状です。手すりをつかもうとした時に、袖口が引っかかってしまうと転倒などの危険性があります。手すりの先端は、壁側に曲がった金具が付いた種類のものを選ぶと安心です。

 

 

トイレの手すりの高さ

トイレは便座に座ったり、便座から立ち上がったりするため、ほかの場所と違って上下運動が中心になります。そのため取り付ける手すりの種類もほかと異なり、縦型かL字型がよいでしょう。

 

取り付ける位置は使用者にもよりますが、一般的に縦型の部分が便座の先端から20~30cmほど前に、横型の部分は便座から23~30cmほど高い位置になります。

 

縦型の手すりは、立ち上がった時に体の前方になるように取り付けてください。力学的にも前目に手すりがあった方が、体の重心移動を効果的に使えるため立ちやすいです。

 

逆にあまりに便器に近い位置に手すりを取り付けてしまうと、立ち上がるのに大変なだけでなく重心が後ろになるため、体に負担がかかります。特に腕や肩に負担がかかるのでおすすめできません。

 

横型の手すりも、低すぎればペーパーホルダーの位置が高すぎるか低すぎるかのどちらかになり、紙を引き出しにくくなります。手すりそのものもペーパーホルダーが邪魔になり、使い勝手が悪くなってしまうため悪循環です。それぞれの位置も考えた設置が必要になります。

 

通常は手すりは便器の横に取り付けますが、出入り口が横にあるトイレの場合には、便器の正面に手すりを取り付けることもあるでしょう。その場合には、トイレの利用者が手すりに頭をぶつけたり、男性が用を足す時に手すりが腰に当たったりする危険性があります。

 

注意をするのはもちろん必要ですが、そのような危険がない位置を選ぶことも大切です。設置前にさまざまな可能性を考えて、手すりの取り付け位置を決めましょう。

 

 

おわりに

手すりは身体的能力が落ちた方でも楽に移動できるよう、補助してくれる便利なものです。取り付ける場所に合わせてさまざまな種類がありますが、高さや取り付け位置を間違えると本来の効果は期待できません。

 

手すりの取り付け個所に合わせて上手に種類を選び、使いやすい適切な高さに設置してください。これまではつらくて家の中でも動くのが億劫だったという方でも、手すりが体の負担を軽くして動きやすい家にしてくれることでしょう。