- 佐藤 恵子
- 4匹の犬たちと、里山暮らしを楽しんでいます。趣味は一人旅、温泉、読書、お菓子作り、籠編みなど多岐に渡ります。自分の好奇心をエネルギーに、皆さんのお役に立てる記事をお届けしたいと思います。
かつおだしと昆布だしの違いを知って料理を格上げしよう!
かつおだしと昆布だしは、視点を変えるだけで様々な違いがあることに気が付きます。材料が違うのはもちろんですが、歴史や旨味成分、使い方やだしの抽出法、地域による違います。かつおだしと昆布だしの違いを理解し使いこなせば、思わず美味しい!といわれる料理にグレードアップできるかもしれません。
かつおだしと昆布だしの旨味成分の違い
日本料理は、だしの文化といっても過言では無いいえるほど、様々なだしを使います。その中でも、かつおだしと昆布だしは、馴染み深いという点では、だしを代表すると言えます。
そこで、かつおだしと昆布だしを比べてみました。かつおだしの旨味成分は、イノシン酸、昆布だしの旨味成分はグルタミン酸です。
イノシン酸は核酸系の旨味成分で、かつおだけではなく、肉類や煮干しなどにも含まれています。核酸は、動物の死んだ後に、酵素の働きで生まれてきます。
しかし、動物が日々切り返す細胞の生まれ変わりに必須なのが、この核酸なのです。だからこそ、身体が欲し、旨味として感じるのではないでしょうか。
昆布だしの旨味成分のグルタミン酸は、アミノ酸系の旨味成分です。グルタミン酸は植物性と動物性、どちらでも抽出することはできます。中でも昆布の持つグルタミン酸は、抽出も簡単で、量も多いことから昔から利用されてきました。
イノシン酸と違い、グルタミン酸は人の身体の中に存在するアミノ酸の1つです。タンパク質を生成するために必要だったり、脳内伝達物質としての役割があったりと、私たちの生命維持には不可欠な成分です。
だし…とは? 歴史と地域による違いを紹介
だしとは、甘味や塩味といった味の1つとして区別される旨味です。実は旨味は、UMAMIと表記され、世界的な公用語となっています。だしの歴史と、旨味を味覚の1つとして認知されるまでを紹介しましょう。
だしの歴史
だしを取るという行為は歴史が古く、かつおや昆布といった言葉は、奈良時代から平安時代の文献に既に登場しています。昔の人も、かつおや昆布を煮だして取ると、料理が美味しいという実体験からくる知識はあったのでしょう。
これをだしという言葉で表現するようになったのは、江戸時代初期のころになります。
だしが旨味という味覚の1つだと発見したのは、日本人科学者の池田菊苗博士でした。博士は1908年に、昆布からグルタミン酸を抽出することに成功し、昆布だしの正体を突き止めたのです。
ちなみに、かつおだしに含まれるイノシン酸の発見は、菊田博士の弟子の小玉氏が1913年に発見しています。
地域によるかつおだしと昆布だしの違い
関東はかつおだし、関西は昆布だしといった印象を持っていませんか?こうしただしの違いは、何に由来しているのでしょうか?
実際、関東は枯節といわれるカビがついて、カンカンとした音が出るまで乾燥したかつお節を使うのが主流で、かつおだしのまろやかさが好まれます。
一方関西は、昆布だしが主流ですが、荒節とよばれるかつおも使った合わせだしが多く利用されます。荒節とは、カビが発生しない程度の乾燥させたかつお節のことです。
昆布だしのスッキリした旨味と、かつおだしの燻製の香りやほんのり感じる酸味が、旨味に奥深さを与えています。
関西で昆布だしが主流になったわけは、いくつか考えれます。特に、朝廷への献上品として、蝦夷から北前船で関西に運ばれたからという説が有力です。
良い昆布は関西で買い取られ、関東に渡るものは質が悪いものだったのではないかと推察されています。
関西の文化のベースは、京の朝廷にあった時代です。京料理の影響を色濃く受けたことが、今でも関西の昆布だしに反映されているのではないでしょうか?
関東では、農業や大工など、肉体労働者が多かったことで、味付けが濃いといった特徴があります。そこで、しっかりしただしの取れる、かつおが重宝されたのではないかということです。
薄口醤油や濃口醤油といった、使われる調味料によっても、だしの活かし方が違ってきます。
ちなみに、昆布だしとかつおだしの合わせだしは、江戸時代には関東でも使われるようになったことが、当時の文献で確認できます。
何にでもある食の境界線は、昆布だしとかつおだしにも存在します。かつおだしと昆布だしの境界線は、おおむね、関ケ原付近といわれています。
昆布だしとかつおだしを使う料理の違い
料理によって、かつおだしと昆布だし、どちらが向いてるといった違いがあるのか調べてみました。
かつおだしは、だしの旨味をしっかり感じたい料理に向いています。例えば、お吸い物やおひたしなどです。
動物性の旨味ですので、植物性の素材と良くあいます。野菜の煮物などに使うと、素材の美味しさを引き立ててくれるでしょう。
昆布だしは、だし自体の味の強さはなく、どんな料理とも相性がよいのが特徴です。かつおだしと合わせた合わせだしにすると、より旨味が際立ちます。
昆布だしだけであれば、水炊きなどの鍋物のだし汁や、魚をいれた汁物や魚の煮物などに相性が抜群です。アミノ酸系のグルタミン酸と、魚からでる核酸系の旨味の相乗効果によるものです。
おわりに
かつおだしと昆布だしの違いは、その旨味成分にあることが分かりました。使用する料理の種類や、好みの味に合わせて、上手に使い分けたり、合わせだしの絶妙なバランスをだすことができたら、日本の家庭料理上級者かもしれませんね。