- 藤岡みなみ
- ふじおか・みなみ/文筆家。暮らしの中の異文化をテーマにした『パンダのうんこはいい匂い』(左右社)が発売中。
藤岡みなみ|思い立ったがDIY吉日 <vol.41>
タレントの藤岡みなみさんが、モノづくりに対してのあれこれをつづるコラム連載!題字ももちろん本人。可愛くもシュールな世界観には、思わず引き込まれちゃいます。今回は、ミシンでのものづくりを語っていただきました。
- 藤岡みなみふじおか・みなみ/1988年、兵庫県出身。テレビ番組・CMに出演からラジオパーソナリティ、エッセイストなど、幅広く活動。バンド「藤岡みなみ&ザ・モローンズ」ではボーカルを務める。
ブログ:藤岡みなみ 熊猫百貨店
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頭を空っぽにしたいときはミシン!
疲れきって、ミシンで作業をしたいとは到底思えない日がある。
一方で、疲れているからこそミシンに向き合いたい日がある。私の中で、その二つの気持ちは矛盾しない。
半年前、個性的な布をたくさん買い込んだ。
ライブの衣装を自分で作ろうと思ったのだ。
タイムトラベルをテーマにしたライブだから、タイムトラベルできそうなちょっと未来っぽいドレスがいい。
しかし、本番が近づくにつれ他の準備などに追われ、物理的・体力的に衣装を作ることができなかった。
ライブが終わり、私の手元には大量の未来っぽい不思議な布が残った。
体が疲れているときは何かを作ろうと思う余裕があんまりないけれど、気持ちが疲れているときはむしろものづくりに没頭したい。
先日、いろいろ考えすぎてちょっとだけ「遠くへ行きたいな」みたいな気持ちになったときがあった。
深夜に考え事をするとそういう変な沼にはまってしまうことがある。
私がもしバイク乗りだったらビューンと走って海を見に行きたい、そんな気分。
夜も遅いし、家族も寝てるし、実際に遠くに行くことはできない。免許もないし。
でも、私にはミシンがある。
バイクをビューン、の代わりにミシンをガターッと布に走らせることで行ける場所があるのだ。
幸い、私には不思議な布がたくさんある。
行き場のなくなった個性的な布たち。
半年前に買った布たちをあらためて見てみると、もう、どんなドレスを作ろうとしていたのか思い出せないほどヘンテコだ。
昭和の宇宙人のイメージから進歩していないシルバーのテカテカ布、5歳の女の子に一番似合いそうな水色のレース、二色の毛糸のポンポンが大量についた、見るからに浮かれている布、などなど。
これらを手に取り、無計画に切って、無計画に縫いはじめた。
何も考えないで集中するのが重要なのだ。
最初にできたのはギンギラギンのバッグ。
未来の上履き入れ、みたいだ。
未来っぽいミニバッグできました。
つぎは、浮かれた布で作ったミニクッション。
綿をつめる作業が好き。ぬいぐるみじゃないけど、布に命が吹き込まれる感じがする。
四角いクッション。まっすぐ縫うのが一番好き。
最後に、何を置くのかわけがわかんないコースター。
試しに透明のグラスに水を入れて置いてみたら、占い師の水晶玉みたいになって悪くなかった。
作らなくていいものを作っているときにだけうまれる、ちょっとした快感がある。
占えそうなコースター。あやしさが良い。
1時間ほど没頭してできたなぞの完成品たちを手に取ると、もやもやがなくなっているのがわかった。
真夜中のミシンは私の最高のデトックスタイムでもある。
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