お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。
ガーデニング
河村ゆかり

プロ解説!クレマチスの育て方|栽培のコツ

つる性の花・クレマチスの育て方をご紹介。初心者におすすめの品種から、栽培カレンダー、剪定のコツなど・・・この1記事でクレマチスの育て方はばっちりです。地植えはもちろん鉢植えでクレマチスを育てたい方必見!【花の育て方シリーズ】。

遠藤昭

ガーデンプロデューサー。サラリーマン時代、家族とともに赴任したオーストラリアでガーデニングに開眼。帰国後は自宅の庭づくりに注力し、さまざまなガーデンコンテストで受賞。定年後、2010年日本ガーデンデザイン専門学校造園ビジネス科修了。2011年英国王立園芸協会コンテナガーデンマスター認定。プロガーデナーとして活動し、川崎市緑化センターでの園芸相談、各種ガーデニング講習会など、自らの経験をもとにガーデンニングの楽しさを教えている。
遠藤昭さんのHP

 

クレマチスについて

© PIXTA

クレマチスを育てるにはまず、クレマチスを知ること!
ひとくちにクレマチスといっても、多種多様なのです。

 

クレマチスの特徴

クレマチス(キンポウゲ科クレマチス属)は、バラのベストパートナーとしてガーデナーに人気のつる性植物です。
フェンス、アーチ、オベリスクなどさまざまな構造物に絡ませれば、庭の雰囲気が一変します。

小輪から大輪までそろうだけでなく、一重咲き・八重咲きだけでなくベル型もあり、色も豊富・・・と、実に300種類もあるのだとか!

見た目以外にもクレマチスは花の咲く時期によって、長期間繰り返して咲く「四季咲き」と、春・冬などワンシーズンのみ咲く「一季咲き」に分けられます。

さらに、どんな枝に咲くかによって、前年の枝に花をつける「旧枝咲き」、今年育った枝に咲く「新枝咲き」、前年枝にも今年の枝にも花がつく「新旧両枝咲き」の3種類に分けられます。

クレマチスは枝咲きのタイプによって剪定方法が変わるので、購入時には必ずチェックしてください。

 

  • 難易度 初心者~中級者向き
  • 耐寒性 普通
  • 耐暑性 普通
  • 耐陰性 弱い
  • 乾燥 普通
  • 草丈 200cm~(つる)

※上記特徴リストは、四季咲きの場合。品種によって異なります。

 

クレマチスの品種

クレマチスの300種以上の品種中、人気があるポピュラーな系統をご紹介します。

【ジャックマニー系(四季咲き・新枝咲き)】
5~10月まで長く花を楽しめる中~大輪系のクレマチス。花つきもよく、育てやすいので初心者にもおすすめ。

 

【ビチセラ系(四季咲き・新枝咲き)】
小~中輪の花、細めのつる、細めの葉と繊細な印象ですが、強健でよく育ちます。5月下旬~10月まで、ひっきりなしに花が咲くのもありがたいところ。

 

【インテグリフォリア系(四季咲き・新枝咲き)】
つるにならない木立性で、青紫系の花の品種が多く見られます。草丈は0.4~2mと様々ですが、なかには宿根草のように扱える小型種もあります。

 

【シルホサ系(冬咲の一季咲き・旧枝咲き)】
夏は休眠し、秋からどんどん育ちはじめ、10月~翌年5月にかけて下向きに白や斑入りの花を咲かせます。ほかのクレマチスより小型のため、鉢植えでコンパクトに仕立てられるのもGood。

 

【モンタナ系(春咲きの一季咲き・旧枝咲き)】
4月~5月中旬に丸い花弁の小花をたくさんつける系統です。八重咲きの「グリーンアイズ」や香りのよい「エリザベス」などが人気品種。生育旺盛ながら、夏の乾燥・高温多湿には弱いので要注意。

 

【早咲き大輪系(四季咲き・新旧両枝咲き)】
4~10月に咲く、花径12~20㎝もの大きな花を咲かせるグループ。鉢植えでもよく育つ品種も多いため、ベランダガーデニングにもおすすめです。

 

このほか、「カザクルマ」など日本で昔から自生していた品種は、日本の気候風土に合っているのでクレマチス初心者でも育てやすいですよ。

 

クレマチスの育て方で押さえておきたい3つのコツ!

  • コツ1 日当たりのいい場所で育てる
  • コツ2 這わせる場所を確保して植えつける
  • コツ3 品種によって適した剪定を

※この記事のカレンダー・育て方は、中間地のものです。

※酷暑期をのぞき植え替えは一年じゅう行えますが、冬の休眠期に行うと安心。

※開花時期は品種により異ります。上のカレンダーは四季咲き品種のものです。

【寒冷地の場合】
植え付け・植え替え 10月~4月
肥料 6月~9月 
剪定 6月~9月、3月
開花 6月~9月(品種によって開花時期は異なります)

【暖地の場合】
植え付け・植え替え 12月~2月
肥料 5月~10月、2月
剪定 5月~10月
開花 4月~10月(品種によって開花時期は異なります)

※酷暑期と厳寒期をのぞき植え付け・植え替えは一年じゅう行えるが、冬の休眠期に行うと安心。

寒冷地=北海道、東北、新潟県、富山県、石川県、高冷地
中間地=福井県、関東甲信、東海、近畿、中国、九州北部
暖地=四国、九州南部、沖縄県

 

クレマチスの育て方【基本編】

© PIXTA

上手に育てれば、たくさん花を咲かせてくれるクレマチス。
まずは土選びや水やりなど、栽培の基本をマスターしましょう!

 

置き場所・日当たり

日当たりを好み、日陰を嫌う性質なので、置き場所・植え場所は日当たり第一で決めて。

ただし夏の西日は苦手なので、夏場は寒冷紗などを活用して日を遮る工夫が必要です。
冬は寒さが本番となる前に、霜に当てないよう鉢植は軒下に移動させてください。

また風通しがよいところを選ぶのもポイント。
とても葉が茂る植物なので、湿気のこもらない風が抜けるところで育ててください。

 

植え付け・植え替え

クレマチスの苗の植え付け・植え替えは、通年行うことは可能ですが、真夏・厳寒期は株への負担が大きすぎるので避けたほうが無難です。
12~2月の休眠期はちょうど新苗も出はじめるころでもあり、もっとも植え付けに適した時期。

クレマチスは根を傷つけられると弱くなるため、元の根鉢を大事に守って植えてください。
庭に地植えするときは、その後移植をしなくてもすむように場所を厳選して。

また地植え・鉢植えに関わらず、つるを1~2節分、土中に埋めて深植えするのがクレマチスの植え付け・植え替えのコツ。
土に埋めたつるから発根し、新しい枝が発生して枝数が増えるため花数も増すのです。

 

土の選び方・肥料

クレマチスは、水はけのよい土を好みます。
鉢植にするときは、元肥入りのクレマチス専用土を購入するか、赤玉7に腐葉土3に化成肥料を規定量混ぜた土をブレンドして。

地植えする場所の水はけがよくない場合は、適量の腐葉土をすき込んで土壌改良してください。

そのほか肥料は、1~2月に寒肥として規定量の発酵油かすを一度、成長期の5~10月まで1カ月おきに置き肥、もしくは月2~3回の液肥を与えます。

 

水やり

地植えの場合、真夏に1~2回水やりする以外は神経質になる必要はありませんが、鉢植えはシーズンごとに水やりの注意点があります。

春の生育期には、土が乾いたらたっぷり水やりをします。
梅雨時は過湿状態が心配に・・・水やりも大切ですが、軒下など鉢が雨にかからないところに移動して。

梅雨が明け、真夏になったら日中は水やり厳禁! 
水を与えるとあっという間に鉢中の温度があがり、熱湯風呂状態になってしまって根が枯れる原因に。
必ず朝・夕の暑さがやわらぐ時間帯に水やりしてください。

冬の休眠期は、鉢の表土が乾いてから1~2日待って水を与え、過湿にならないよう管理を。

 

クレマチスの育て方【シーン・トラブル編】

© PIXTA

この章では、クレマチスを栽培するうえで要になるシーンや、起きがちなトラブルの解決法をご紹介します。

 

剪定

四季咲きのクレマチスは5~10月の花期に、花が咲いた後に剪定をします。その他のタイプのクレマチスも花が枯れるたびに「花後剪定」をすれば、枝の形を整えるだけでなく、花数を増やすことができます。

また2~3月の春前にも、花芽のない枝と枯れ枝の剪定を。このとき、花芽がついている枝まで切らないように、よく枝を観察するのがポイントです。

なお剪定の方法は、枝咲きのタイプによって異なりますので注意しましょう。

旧枝咲きの花後剪定は、枝の形を整える程度の弱剪定を。
春前の剪定も、花芽がたくさんついているので弱剪定にするのがコツ。

新旧両枝咲きのクレマチスは花後剪定の方法に制約はなく、つるの長さや込み具合によってどのくらい剪定するか自由に決めて問題ありません。
春前の剪定は、つるの半分くらいの長さを目安に中剪定を。

新枝咲きの花後剪定は、2番花を咲かせるために根元から2節程度で強剪
定。春前の剪定時も、今後のびる枝に花芽がつくので、ばっさりと根元から強剪定してください。

剪定時には、見た目の美しさはもちろん、風通しをよくして病害虫を予防するためにも誘引作業を行って。
つるが絡んでいたら、そっと手でほどき、支柱やネットの少し上の位置に固定します。

 

増やし方

クレマチスはつるを土に埋めて発根させる「つる伏せ」と「挿し芽」で増やせますが、手軽なのは「挿し木」です。

5~7月、今年伸びた新枝を2節分ずつにカットし、水に1時間くらいつけて吸水させます。
苗ポットや3号程度の鉢に専用土を入れ、吸水させた枝の切り口に発根促進剤を霧吹きしてから挿します。

クレマチスは発根するまでは乾燥厳禁ですから、鉢の受け皿に水をはってそこに鉢を置く「腰水」をして乾燥を防止するのがおすすめ。
明るい日陰で、鉢皿の水を毎日替えながら3週間ほど管理すれば、根が出てきます。

約2カ月後、7月~9月ごろになったら、充分根がはっているので、庭や鉢に植え替えましょう。

 

病害虫

クレマチスは比較的病害虫に強いものの、暖かくなる春先から被害が増えるアブラムシ、梅雨時期によく見かけるナメクジなどの食害に注意して。

ナメクジは見つけ次第、割りばしなどで捕獲、処分するか、専用の薬剤を使用します。

アブラムシも見つけ次第薬剤をかけるか、あらかじめ予防薬をまいておくのも手ですよ。

病気では4~10月ごろ、うどんこ病にかかることがあるので、事前に殺菌剤を塗布しておくと安心です。
うどんこ病の予防策として、剪定や誘引で風通しを確保したり、原因となる泥の跳ね返りを軽減するためバークを株元に敷いたりするのも手。

 

クレマチスの育て方Q&A

© PIXTA

ここからは、クレマチスの育て方の疑問にお答えします。
初心者はもちろん、上級者も必見!

 

Q.クレマチスが枯れてしまう原因は?

一般にクレマチスが枯れる原因として考えられるのは、ふだんの手入れでは、水不足や過湿など不適切な水やり、肥料の与えすぎ、まちがった剪定による切り詰めすぎなどです。

また、節の近くでカットすると枯れ込んでしまうケースが多く、剪定するときには節と節の中間で切るのがコツ。
季節がらでは、夏の蒸れや強い西日で株が弱ることも少なくなく、遮光も大事な栽培テクニックです。

四季咲きよりも比較的強健な冬咲きのクレマチスを選んで栽培するのも良いでしょう。

 

Q.誘引のコツを教えてください

クレマチスの誘引は、長くのびたつるを要所要所で留めていきます。
フェンスなどの広い面では、左右に植えて横方向へ導き、両側から面を埋めていきましょう。

アーチやオベリスクなど、上へ向かって伸ばさせたいときは、つるの長さを事前にチェックして植えるのがポイント。
つるが短めのクレマチスなら横に這わせ、端まで来たら折り返し「S」を描くように誘引します。
つるがが長く成長旺盛な品種は、まっすぐ縦方向に枝を伸ばして留めるといいでしょう。

誘引はクレマチスを美しく見せるためのテクニックですが、風通しを確保して病害虫を予防する役割もあります。
あまり密にせず、見た目と同時に通風も考えて誘引して。

 

Q.クレマチスの花があまり咲きません。原因は?

クレマチスの花の数が少ない場合、花をつけるだけの栄養が足りない・・・つまり、肥料不足もしくは日当たり不足がまず心配です。

肥料不足と考えられるのなら、即効性のある液肥を与えて様子を見てください。

日当たりに関しては、地植えの場合は日当たりのよい場所を選んで植え付けるのが何よりも肝心。

もし木陰などで日当たりが阻害されているのなら、木の枝をを剪定しましょう。

鉢植のクレマチスならば、日当たりのよい場所にすぐに移動を。

また、花がら摘みをさぼると種がつくため、花が咲かなくなります。
種がつくと子孫が確保できたことになるため、これ以上花を咲かせる必要がなくなるのだとか。

 

クレマチスの育て方はいかがでしたか?
鉢植えならベランダガーデンでも育てられるので、ぜひチャレンジしてくださいね。