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ガーデニング
河村ゆかり

プロ解説!イチジクの育て方|剪定・収穫方法など

イチジク(無花果)の育て方をプロ・国吉さんに教えてもらいました。枝の剪定、肥料、水やりなど、美味しいイチジクを収穫するために知っておきたい情報を網羅。家庭菜園初心者が疑問を持ちやすいQ&Aコーナーもあり。【果樹の育て方シリーズ】

国吉純園芸家・レモン研究家。造園や植栽管理、園芸講座、執筆、造園などを通して、家庭園芸の普及に力を注ぐ。実体験をベースにしたベランダガーデニングや、園芸療法が得意。国吉さんHP「ジュリエッタ・ガーデン」

イチジクについて

© PIXTA

育て方の前に、まずはイチジクの特徴や品種について解説。

 

イチジクの特徴

手の平のような大きな葉が「観葉植物のようでおしゃれ」と人気のイチジク(クワ科イチジク属)。
半耐寒性の落葉低木で、アラビア半島南部の温暖で肥えた土地が原産です。

非常に古い歴史のある果樹で、古代エジプトの壁画にも描かれ、旧約聖書にも登場しているのだとか。
現代でも「育てやすい」「実つきが良い」「おいしい」と三拍子そろった果樹として、ガーデナーに支持されています。

地植えだけでなく、プランターや鉢植でも充分収穫を楽しめますよ。

  • 難易度 初心者向き
  • 耐寒性 やや弱い
  • 耐陰性 やや強い
  • 耐暑性 比較的強い
  • 乾燥 やや弱い
  • 樹高 2~5m

 

イチジクの品種

イチジクの品種は6月中旬~7月中旬に収穫できる「夏果専用種」、8月中旬~10月に採れる「秋果専用種」、そして夏と秋両シーズンの「兼用種」があります。

また、日本で栽培されるイチジクの多くは、「蓬莱柿(ほうらいし)」(秋果専用種)と「桝井ドーフィン」(兼用種)といわれています。

「蓬莱柿」は、東北地方でも植えられている耐寒性の強い品種で、乾燥にも比較的強く、栽培は容易。

「桝井ドーフィン」は、実つきがよく育てやすいのですが、寒さに弱く、冬は室内に入れる必要が。

また、「セレスト」という品種もあります。
秋果専用種でもっとも早生の品種で8月には成熟し、9月中旬まで収穫可能。豊産性で、小ぶりな実は皮ごと食べることができます。

 

イチジクの育て方で押さえたい3つのコツ!

  • コツ1 日当たりは良く風は穏やかな場所を
  • コツ2 水やりは鉢の状態をチェックして切らさずに
  • コツ3 カミキリムシは見つけ次第駆除!

※収穫について。「夏果専用種」は6月中旬~7月中旬、「秋果専用種」は8月中旬~10月、「兼用種」は7月中旬~10月。

※肥料について。9月中旬の施肥は「夏果専用種」のみ、10月下旬の施肥は「秋果専用種」と「兼用種」のみに施す。

 

イチジクの育て方【基本編】

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イチジクの剪定や肥料などの育て方を紹介。
初心者はもちろん、上級者も必見です!

 

水やり

水やりは、乾いていたらたっぷり与えます。
イチジクの大きな葉からは、たくさんの水分が蒸散されますから水切れは禁物。
また雨が降って水は充分と思っても、大きな葉が雨よけになってしまい、鉢土には水分が行き渡っていないことも・・・。

直に土に触れて、土の乾燥具合をチェックし、水やりのタイミングを逃さないようにしましょう。

 

土の選び方・肥料

家庭菜園初心者は、果樹専用土を使うと安心です。
自身で土をブレンドする場合は、赤玉土:腐葉土:鹿沼土=5:3:1を目安に水持ち水はけの良い土に。

水はけの悪い土では過湿で生育不良になるためです。さらに保水力がないと、イチジクの根は浅いので、充分に水分補給できないまま土が乾いてしまうことに・・・。

肥料は寒肥を12月下旬~1月に与えます。
追肥は6月〜7月に与えたうえで、夏果専用種は9月中旬、秋果専用種と兼用種は10月下旬にももう一度施してください。

肥料は油粕:骨粉=2:1の配合肥料が基本ですが、枝の成長が悪い場合は即効性の高い液肥を散布しても。

 

置き場所・日当たり・温度

イチジクの生育適温は15度~30度未満で、日当たりのよい場所が大好き。

30度を超えると成長しなくなり、38度以上で果実にダメージがでるといわれています。夏場は半日陰に鉢を移動させたり、寒冷紗などで遮光するとよいでしょう。

また、イチジクの大きな葉は風の影響を受けやすいので、強風にさらされない場所を選ぶのもポイント。

 

イチジクの育て方【シーン・トラブル編】

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剪定や収穫、病害虫など、シーンごとの育て方のポイントをご紹介します。

 

剪定

11~3月の休眠期が剪定のタイミング。

秋果専用種の場合、枝の先端には花芽がなく、剪定時期にあるのは全て葉芽。葉芽から枝葉が伸びて、葉の付け根に純正花芽がつき果実になるので、剪定はそれほど神経質にならなくても大丈夫です。

しかし夏果専用種は、枝の先端に花芽があり、枝先を切ると実がつかなくなりますから、長い枝だけ切り返すのがポイント!

 

植え付け・植え替え時期

休眠期の終わりの3月が、植え付けにもっともよい時期です。
鉢は、水はけや根はりがよいスリット鉢が最適。
交差している根をカットして整理し、根を広げて植え付けます。

イチジクを植えた後、幹を高さ約30㎝を目安に、芽の少し上で切り、切り口には保護のため融合剤を塗ってください。

ベランダなど限られたスペースでイチジクを育てている方は、幹を高さ約30㎝を目安にして芽の少し上で切り、樹高を制限してください。切り口には融合剤を塗って保護するのもお忘れなく。

最後に、イチジクが動かないよう支柱で固定すること。
小さい鉢は幹に沿って真っすぐに支柱を立て、大きめの鉢の場合は風の向きに逆らうよう斜めに支柱を立てれば倒れにくくなりますよ。

植え替えは2~3月が適期。2~3年おきに植え替えをおこなってくださいね。

 

増やし方

イチジクは接ぎ木でも増やせますが、挿し木が一般的です。

挿し木をする際は、冬場に剪定した枝を湿らせたキッチンペーパーにくるみ、ビニール袋に入れて冷蔵庫に入れて保存。3~4月、充分に暖かくなったら3~4節のところでカット、枝元を下にして挿し木します。

その後、こまめに水を与えて発根を促しましょう。

 

花・実のつけ方

イチジクは漢字で書くと「無花果」ですが、実の内側の空洞に小さな花がちゃんと咲きます。

また実のつき方は、品種によって異なります。
秋果はその年にのびた新しい葉の枝元に実がなり、夏果は前の年の枝についていた小さな実が大きくなっていきます。兼用種は1本で、夏果・秋果両方の実つきがのぞめます。

 

収穫

イチジクは他の果樹に比べ植え付けから収穫までの期間が短く、3月に植えれば翌年の夏には最初の収穫が望めます。夏果専用種は6月中旬~7月中旬、秋果専用種は8月中旬~10月、兼用種は7月中旬~10月が収穫期。

果皮が色付いて果実がふっくらやわらかくなったら、実を手で持ち上げてもぎとりましょう。

実をもぐと白い樹液が出ますが、これにはたんぱく質分解酵素「フイシン」が含まれていて、触るとかゆくなるので注意してください。

 

病害虫

イチジクの大敵はカミキリムシ!
幼虫が幹や枝の中にひそんで食い荒らし、最悪の場合は木を枯らします。
カミキリムシの幼虫が入ったイチジクには、木くずのような粉状のフンが出ますから、見つけ次第捕殺するか、専用薬剤で駆除しましょう。

またイチジクの病気では、さび病や疫病が心配。
カビの一種であるさび菌により発病するさび病は、葉が病変を起こしたのち、落葉します。
疫病は、もうすぐ収穫できる果実を腐敗させてしまうやっかいな病気です。
水はけの改善や風通しの確保など、病気予防の環境を整えてください。

病気の葉をつけたままにせずにとり去ることも大切です。

 

冬越し

亜熱帯果樹のイチジクは、寒さが苦手です。
鉢ごとすっぽり不織布で覆ったり、鉢を霜や雪のかからない軒下に移動させるなど、防寒対策を。
寒冷地の場合、厳寒期は室内に取り込みますが、芽がのびるので暖房のきいた部屋は避けましょう。

 

イチジクの育て方Q&A

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「こんな時どうすればいいの?」という疑問を、国吉さんにこたえてもらいました。

 

Q.イチジクを地植えで育てるときに気をつけることは?

イチジクを地植えする際は、「忌地(いやち)」に気をつけてください。
忌地とは、同じ場所に同じ種類の植物を植えると育ちが悪くなるということ。

「最初のイチジクが枯れたから、そこに新しい苗木を」というときには、深く掘ってしっかり土を入れ替えてください。

 

Q.立派な木に育ったのですが、実が付きません。

まず考えられる原因は、「日照不足」と「肥料不足」です。
鉢の場所を日当たりのよい場所に移動させたり、年3回の施肥を行ってください。

夏果品種の場合は、実ができるはずの前年枝を剪定したことが原因かもしれません。
剪定は、風通しを悪くしている内側に向いた枝を整理したり、枯れ枝を取り除く程度にしましょう。

 

Q.10月なのにイチジクの果実が小さく・・・熟すまえに寒さでダメになるのではと心配です。

イチジクが寒くなる前に実るよう、「オイリング(オイル処理)」をしてみて。

果実の直径が3㎝くらいのとき、スポイトにオリーブオイルなど植物油を入れ、イチジクの目(果実の中心の赤いところ)に1~2滴付けます。
植物油に含まれる植物ホルモンの「エチレン」が成熟を進め、7~10日、成熟が早まりますよ。

 

イチジクの育て方はいかがでしたか?
家庭で栽培すると、早取りして出荷している市販品と異なり、しっかり完熟した濃厚な甘みととろけるような口当たりを楽しめますよ。