- 岩本恵美
- フリーランサー(編集・執筆、たまに翻訳)。
東京・下町生まれの下町育ち。Webメディアや新聞記事の編集・執筆を経て、フリーランサーに。経済からエンタメまで、気になったら何でも手を出す雑食系。ここ数年は盆踊りにハマっています。
確定拠出年金と退職金の違いって?【お金のプロが疑問を解決!】
「会社が確定拠出年金制度を導入したけど、正直、従来の退職金との違いがわからない……」というお悩みをお金のプロが解決! 確定拠出年金と退職金との違いはもちろん、よくあるシチュエーション別に確定拠出年金と退職金にまつわる疑問にもお答えします。
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山崎俊輔
1972年生まれ。中央大学法学部卒業後、企業年金研究所、FP総研を経て独立。老後に向けたお金作りのアドバイスが得意。投資教育と確定拠出年金の専門家でもある。マンガやゲーム、アニメ好きといったオタクFPの一面もあり、マンガの蔵書は約4000冊。
今さら聞けない!確定拠出年金と退職金の違いとは?
退職金も確定拠出年金も単に「退職時にもらえるお金」という認識になっていませんか? 実はその認識は大間違い! まずは両者の根本的な違いを知りましょう。
退職金は会社まかせ
退職金は、資金準備から給付まで全て会社が責任を負って行います。一般的には勤続年数によって受取額が増えていき、退職時に一括で受け取れます。
全てを会社にまかせていいのでラクチンですが、会社の業績に左右され、退職時の景気によっては減らされることも。会社が倒産なんてことになれば、退職金はまずもらえないでしょう。
また、もし定年前に自己都合で退職した場合、一般的に退職金の3割程度が減額されるケースが多いです。
- 退職金の特徴
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- ・資金準備から給付まで会社責任
- ・給付額は退職時の会社の業績に左右され、減らされることもある
自己都合による退職の場合は減額されることが多い- ・在職中の役職や勤続年数で、退職金額が変わってくる。退職時に受け取れる
- ・受給時に退職所得控除の対象となる
確定拠出年金は自分で運用
一方、確定拠出年金(企業型DC)の運用は自己責任。基本的に掛金や口座管理手数料などは会社負担となりますが、運用方針や運用商品は自分で決めなければなりません。
運用というと、投資をしないといけないと誤解されがちですが、確定拠出年金の中には必ず定期預金のような元本確保型の商品もあるので、上手に組み合わせて活用すれば元本割れのリスクを気にしすぎる必要はないでしょう。
確定拠出年金は運用の手間はかかりますが、会社が不景気だろうが、倒産しようが、個人の財産として会社とは切り離されているので、その資産は確実に守られます。
ただし、老後の資産形成を目的にしているものなので、60歳になるまでは受け取れません。また、解約はできず、定年前に転職や退職をしても、その時点では受け取れず、口座を転職先の企業型DCや個人型確定拠出年金(iDeCo)に引き継いで運用を続けていきます。そうした制約がある分、税制面での優遇が大きいのも特徴です。
受け取り方は、一時金としてまとめて受け取ることも、年金払いで受け取ることもでき、この2つを併用することも可能です。
- 確定拠出年金(企業型DC)の特徴
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- ・運用は自己責任
- ・会社の業績に左右されずに個人の財産として守られる
- ・受け取れるのは60歳以降。受け取り方法は一時金払い、年金払い、両者併用から選択可能
- ・運用益が非課税、受給時には受け取り方によって退職所得控除や公的年金等控除の対象となる
お金のプロが回答!こんな時どうなる?Q&A
近年、退職金の代わりに確定拠出年金を導入する会社が増え、会社員の5人に1人が加入しているともいわれています。確定拠出年金加入前、加入後によくある疑問にファイナンシャルプランナーの山崎俊輔さんが回答します。
Q.確定拠出年金への加入か退職金前払いかが選べるといわれました。どちらを選ぶのがお得なのでしょうか?
会社によっては確定拠出年金に強制的に加入しなければならないところもありますが、入るか入らないかを選べるのであれば、基本的には入った方がお得です。入らないということは、定年時にまとまって受け取れるお金がなくなるということになるので、将来に対して不安を残すことになります。金額的なことを考えても、前払いでもらった場合は所得税や住民税、社会保険料が引かれてしまうので、手取りとしては3割ほど減ってしまいます。
Q.勤め先で従来の退職金から確定拠出年金制度に切り替わると聞きました。退職金はまったくもらえないのでしょうか?それとも両方の恩恵を受けることができるのでしょうか?
会社の退職金制度によります。確定拠出年金1本でいくという会社もありますが、退職金と確定拠出年金の2本立てにしている会社もあります。また、過去の退職金の権利は、確定拠出年金に引き継ぐ場合と退職金として変わらない場合があります。まずは会社に確認してみましょう。
Q.転職します。前職では確定拠出年金制度がありましたが、転職先にはありません。積立金はどうなりますか?
確定拠出年金は、原則、60歳になるまで解約はできません。
転職先の会社に確定拠出年金制度がない場合は、基本的に個人型の確定拠出年金に移行させることになります。口座ごと引き継ぎ、引き続き60歳まで積立・運用することができます。あるいは、個人型に移行させたのち、月々の拠出はせずに運用指図者として運用だけを行うこともできます。
Q.確定拠出年金は運用中のプランの見直しが必要ですか? また、どういうポイントを見て判断すればいいのでしょうか?
運用する金融商品の見直しは、基本的には年に1回あるいは数年に1回で十分だと思います。定期預金などの元本確保型商品と投資信託などを自由に組み合わせられるので、自分にとって何割くらい投資に回すのが適切かを考え、シミュレーションしてみてください。確定拠出年金は長期運用していくものなので、頻繁な売り買いはしない方がベターです。
Q.確定拠出年金を受け取る時は、一時金としてまとめて受け取るのと、年金払いとどちらがお得ですか?
これは受け取る時の税制によって変わってきます。一時金の場合は退職所得控除の対象、年金払いの場合は公的年金等控除の対象となるのですが、控除額は税制改正で変わってくるので、最新の税制を見て判断するのがよいでしょう。
確定拠出年金も従来の退職金も、どちらも老後の生活に備えるものとしてできた制度。終身雇用の時代が終わりつつある中、勤め先に確定拠出年金がある場合はしっかり活用して、会社に代わって自分の手で老後に備えていきましょう。