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DIY
藤岡みなみ

藤岡みなみ|珍しい道具や素材に挑戦してみたい【思い立ったがDIY吉日】vol.84

文筆家・ラジオパーソナリティの藤岡みなみさんが、モノづくりに対してのあれこれをつづるコラム連載!題字ももちろん本人。かわいくも愉快な世界観には、思わず引き込まれちゃいます。今回は、DIYの冒険について!

藤岡みなみ
文筆家。暮らしの中の異文化をテーマにした『パンダのうんこはいい匂い』(左右社)が発売中。
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珍しい道具や素材に挑戦してみたい

 ▲2023年おめでとうメガネを作りました。

 

 

いつもと違うDIYについて書いてみたい。

 

木材で机を作ったり、ペンキで色を塗ったり、花壇を整えたりするのとはちょっと違うこと。

やってみたことのないことに挑戦するのは全部DIYだと思っている。

 

 

 ▲結構すぐ固まるので焦る。

 

 

3Dアートペンなるものを手に入れた。

その名の通り、立体物を描けるという。

 

そんな夢のような道具が実際に売られているのだ。

 

ペン先の温度を上げると、インクとなる樹脂が溶けペン先から出る時に再び固まるタイプを使用。

 

ボタンを押すと、にょいーんと樹脂が出てきた。

フリーハンドで立体物が生まれる瞬間はちょっと感動的だ。

 

さっきまでこの世に存在しなかった物体が、数秒後いきなり目の前にある。

 

細かい模様を描くのはまだ少し難しいので、比較的直線が多い物体であるメガネを作ってみた。

 

ただのメガネではつまらないと思い、2023の装飾をつけることにする。

ちょっと懐かしい。

 

こういうメガネの流行のピークは2000年だった。

 

2000年を陽気に祝いたい気持ちはわかる。

丸も3つもあってメガネに合う。

 

比べて、たいして語呂もよくない2023という数字をわざわざメガネにしたい人は少ないかもしれない。

 

でも2000年だって2023年だって、私にとって人生で一度きりの、かけがえのない1年だ。

 

かくして2023メガネが誕生した。

2023年ももう残り少ないタイミングで。

 

装着すると、2023年が始まったばかりのときの新鮮な思いがほんのわずかに蘇ってきた。

 

いまさらながらおめでとう2023年。

 

3Dアートペンは、この世に別になくてもいいものを作るのに最適な道具だ。

 

 

 ▲買い物かごと目玉焼き。3Dペンは自由自在。

 

 

先日、初めて槌目をつけた。

 

槌目とは、ハンマーで打ち付けた跡をつけて仕上げる加工のことだ。

 

錫の酒器をいただく機会があり、どうぞ槌目をつけてくださいと言われた。

 

ハンマーでコンコンと打ち付けるとごく小さな跡が残る。

 

パッと見てわかりやすいものではないが、一つとして同じ跡はない。

 

強く打つと大きめ、優しく打つと小さめの形跡が残る。

 

未開拓の月にクレーターができていくような、見たことのない色と形の変化。

 

指でなぞると錫の肌が繊細に波打っているのがわかって心地よかった。

 

淡々とただ叩いているだけで、唯一無二の器になっていく。

 

無心で槌目をつけている時間。

それは、無理にユニークであろうとしなくても暮らしとはもともとユニークなのだと思い出すひとときでもあった。

 

キツツキのようにずっとコンコン鳴らしていたので家族には「それあと何分で終わりそう?」と聞かれた。

 

 

 ▲槌目はかわいい。ムラがあるのがまたいい。

 

 

世界の未知をDIYで切り開く

 ▲『超個人的時間旅行』というZINEを制作。

 

 

この夏、同人誌を作った。

 

タイムトラベルをテーマに10人の作家さんにエッセイを書いてもらったのだ。

 

人に依頼することも考えたけれど、デザインや組版も一度自分でやってみようと決めた。

 

文字組みやノンブル(ページ数)入れに苦戦し、ミスがないよう目をこらし、入稿も最後の最後まで戸惑った。

 

紙を選ぶのにも1ヵ月かかってしまった。

 

普段自分が書いている文章が、いかに多くの人の仕事を経て届けられているかという事実をあらためて噛み締める。

 

結局お世話になっている編集者さんに最終仕上げを手伝ってもらった。

 

同人誌は文学フリマという販売会で売る予定だ。

 

普段、商業出版で本を出していても、あえて小さな本を作ってこうしたイベントで手売りする作家は少なくない。

 

できたてのたい焼きを売るような、熱々のやりとりが生まれる会場。

ここにもDIY魂がある。

 

 
触れたことのない素材に触れ、やったことのないことをやって、常に新しい感覚を得たい。

 

それが私がDIYを続ける理由なのだと思う。

 

毎日新しいことを試したとしても、世界はまだまだ未知で満ちているのだろう。

 

失敗しながらへこたれながら、それでもきらりと光る新感覚を目指して冒険を続けたい。