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DIY
藤岡みなみ

藤岡みなみ|生活の祈り、ウクライナの飾り【思い立ったがDIY吉日】vol.82

文筆家・ラジオパーソナリティの藤岡みなみさんが、モノづくりに対してのあれこれをつづるコラム連載!題字ももちろん本人。かわいくも愉快な世界観には、思わず引き込まれちゃいます。今回は、パヴークについて!

藤岡みなみ
文筆家。暮らしの中の異文化をテーマにした新刊『パンダのうんこはいい匂い』(左右社)が発売中。
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生活の祈り、ウクライナの飾り

 ▲小さなブドウの木がやってきました!

 

 

生活が好きだ。

 

ホームセンターを訪れる人も、いまこの文章を読んでくれている方も、きっとかなりの高確率で同じ思いなのではないだろうか。

 

生活最高。

 

派手でなくても、作ったり食べたり整えたり維持したり、いくつもの営みの中でしみじみと「いいなぁ」と思える瞬間を重ねたい。

 

 
そんな愛おしい生活を一変させてしまうつらい出来事も、残念ながらこの世にはある。

広い地球のどこかで今日も、災害や事故や戦争が暮らしを踏みつけている。ずっと気にかかっているのはウクライナの人々のことだ。

 

私は具体的な祈りの方法を知らない。

 

祈るしかできないようなことであふれているのに。

 

不安に押しつぶされそうになる時に何か手を動かしてみたくて、思い出したものがあった。

 

パヴークと呼ばれるウクライナのクリスマス飾りだ。

 

たまたまパヴークの写真を目にした時、クリスマスと言ってもとても涼しげで素敵だなと思った。

 

藁わらで作られた幾何学模様が見事で、じっと見続けてしまう魅力がある。

 

ベージュをメインカラーにした私の部屋に似合いそうだと思って、見よう見まねで作ってみることにした。

 

 

 ▲幾何学模様に導かれるように組む。

 

 
接着剤を使って、マドラーを三角形に組む。

三角同士を合わせて今度は立体の三角を作る。

繰り返し。

 

ウクライナと生活に思いをはせながら作業していたら思っていたより時間が経っていた。

 

白い麻ひもでつるしてみたら、想像していた通りかわいい。

 

正しい作り方をいつかきちんと習いたいと思った。

 

部屋にパヴークを飾りながら、何ができるか考え続けたい。

 

DIYは祈りに似ている。

生活の祈りそのものかもしれない。

 

私と周りの大切な人たちと、会ったことがない遠くの誰かが大丈夫であるように願い続ける。

 

 

 ▲夏にもぴったりなオーナメント。

 

 

フルーツと暮らすとテンションが上がる

去年から山梨で暮らしている。

 

長年東京に住んでいたけれど、もう少し広々としていて自然豊かなところで生活してみたいと思った。

 

日々の散歩が最高に楽しい。

 

富士山も毎日眺められるので、勝手に仲良くなった気分でいる。

 

初夏、雪が溶けて黒っぽい山肌に気付いた時は「おっ、イメチェンしたんだ」と声をかけたくなった。

 

 
フルーツの存在感もすごい。

 

果樹園を見ているだけで豊かな気持ちになる。

 

たとえその実が自分のものではなくても、大きくなったり色づいていったり様子を目にするととても嬉しい。

 

ずらっと並ぶ桃の木やブドウ畑の丘。

 

いちご狩り、ブルーベリー狩り、ワイナリー。

フルーツに囲まれて暮らすと元気が出る。

 

ちょっとしたお土産、お見舞い、デザート。日常の嬉しい気持ちを担当する食べ物だからもしれない。

 

 
そんな山梨でずっとやってみたかったのがブドウを育てることだ。

 

軒先で個人的に栽培しているお家を見て羨ましく思っていた。

 

ブドウは木だし、栽培する十分なスペースもないので難しいかと諦めかけていた時、鉢植えでも育てられることを知った。

 

 

 ▲かわいすぎる鉢植えと暮らしてます。

 

 

迎えたのは小さなデラウェアの鉢。

 

もういくつか実がついていて、紫色になったら食べられるらしい。

ここまで育ててくれた人、ありがとう。

 

こぢんまりとしつつちゃんと実っている姿が素晴らしく愛おしいので、父の日のプレゼントに同じものを贈った。

 

雨がかかると病気になりやすく、また鳥にも狙われやすいと聞いてひと房ずつビニールをかけてやった。

 

小さな小さなブドウ農家気分。

 

こうやって大事に守ってきたブドウをついに収穫する日、どんなに喜ばしいだろう。

 

 

6月下旬、早くもデラウェアが色付き始めた。

 

ひと房の中にグラデーションがある姿が美しい。

 

私はいま、山梨でブドウを育てている。

 

ブドウの赤ちゃんと暮らしている。

 

夢の自宅ブドウ狩りまであと少し。

 

あまりにもピカピカに育ったら、調子に乗って家族から入場料を取ってしまうかもしれない。

 

 

 ▲私はブドウの保護者。しっかり守ります。