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DIY
藤岡みなみ

藤岡みなみ|絵の具セットとの和解【思い立ったがDIY吉日】vol.76

文筆家・ラジオパーソナリティの藤岡みなみさんが、モノづくりに対してのあれこれをつづるコラム連載!題字ももちろん本人。かわいくも愉快な世界観には、思わず引き込まれちゃいます。今回は、絵の具の修業について!

藤岡みなみ
文筆家、タイムトラベル専門書店utouto店主。縄文時代と四川料理が好き。やってみたがり。
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絵の具セットとの和解

 ▲絵の具コンプレックスを卒業したい。

 

修業をしている。「絵の具を面倒くさいと思わない」修業だ。

 

子どもに「絵の具やろう」と誘われれば、早朝でも、夕食後でも、1時間前に片付けたばかりでも必ずまたパレットを広げると決めた。私自身が幼い頃から抱いていた「絵の具って面倒くさい」という思いを払拭したいからだ。

 

思い返せば、昔から私の絵の具セットだけいっとう汚れていた。なぜなのだろう。

小学校の図工の時間、みんな同じように絵の具を使って、終われば水道に並んで道具を洗っているのに、私のだけ年季ものみたいに色がこびりついていた。

クラスで一番の優等生のユキコちゃんのパレットはいつ見てもきれいで、絵の具セットの使い方ひとつに人格が表れるのだと思った。

ちなみに筆洗いバケツの水も開始1分で真っ黒になる。あと家族ですき焼き食べる時私だけ溶き卵が茶色くなるスピードが異様に速い。それは関係ないだろうか。

 

絵の具の代表的な面倒ポイント3つ。

その1、道具のケアの難しさ。

その2、くみに行くのが大変なのに水がすぐ汚れること。

その3、紙の上で色が混ざったり用紙がふやけたりする難しさ。

全部せっかちでがさつな自分の性格が原因だと思うが、それでも色鉛筆やクレヨンやペンよりも手間がかかるというのは多くの人が感じていることだろう。

 

残った絵の具がもったいないからあとで使おうと洗わずにしまったパレットが、もう二度と開かなかったこともあった。いまさらだけど、絵の具と仲良くなってみたい。

 

私にとって絵の具との不仲は過去に置いてきた忘れ物のようなもので、ここをクリアすれば創作においても精神面でもなにかしらのステップアップが見込める気がしているのだ。自分自身に貼っている「絵の具セットが汚い人間」というレッテルを剥がしたい。

 

もっと気軽に水性絵の具で遊ぶ

 ▲惑星のモビール。ニャンコ星もある。

 

こうして絵の具修業は始まった。

 

子がやりたいと言い出したのに5分くらいで「もうやめる」と放り出されることもあるし、パレットの小部屋が全て漆黒の闇に染まることもある。床が水浸しになるのも珍しくない。

でも「だから絵の具は大変なんだよ」と思わずに「ハイ喜んで!」とテキパキ片付けてみる。

 

洗ってまた出して、洗ってまた出して、多い時では1日に3回くらい絵の具で遊ぶようになった。いいぞいいぞ、求めていたのはこの軽率さだ。

 

 ▲限定1部のオリジナル便箋づくり。

 

やっぱり絵の具を混ぜて思い通りの色を作るのにはロマンがある。他にはあまりない楽しさだ。

最近やってみた遊び。

段ボールに絵を描いてつるし、惑星のモビールを作る。

ペットボトルにラメと絵の具を入れて、魔法のジュースやさんごっこ。

幾何学模様を描いてオリジナル便箋にする。

丸く切った絵をプラスチックケースに入れて、キーホルダー製作。

手に色を塗ってスタンプ。

絵の具をたっぷりのせた紙を半分に折って左右対称の模様を作る遊び。などなどなど。

 

水性絵の具には、まだまだやれることがありそう。思いついた遊びをどんどん試しながら、絵の具との距離を縮めることができてきた。

 

 ▲キーホルダーにするとなんでもそれらしくなる。

 

それでもやっぱり私のパレットは汚い。どんなに丁寧に洗おうと心がけていてもこびりついた色が取れない。時間をかけて洗えばいいというものでもなさそうで困った。

ところが、調べてみるとこの汚れは消しゴムで簡単にきれいになるという。

 

ええ、そうなの?

 

やってみると本当だ。洗うというよりこすることで色が落ちるらしい。もしかしたらユキコちゃんも家でこれをやっていたのかな。早く教えてほしかった。

 

こうして私は「絵の具セットが汚い」というささやかな、だけどたしかにこびりついていたコンプレックスを、無事に洗い流すことができたのだった。そしてせっかく仲良くなれた絵の具と共に、これからもっともっといろんなものを汚していきたいとも思っている。

 

 ▲早く知りたかった消しゴム情報。