- 津久井 玲子
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仏壇の正しい配置場所は?お供え物の配置もご紹介します
引っ越し先などの新しい家で、仏壇をどこに配置したらよいのかわからない。特に現代の家では仏間などがないため、困ることも多いことでしょう。そこで仏壇の正しい配置場所について調査してみました。お供え物の扱いについてもご紹介します。
仏壇の配置場所
かつての日本家屋では仏壇を置くための仏間があるのが当たり前でした。親族が集まって仏事を行いやすいようにと仏間には座敷が隣接し、ふすまを外すだけで大広間になるよう設計されていたのです。
しかし、現在ではそのような家も減ってきています。仏間そのものがない家だって珍しくありません。そのため仏壇の配置場所にも困るのです。
では、仏間がない時の正しい仏壇の配置場所はどこなのかといえば、「決まりはありません」となります。心を落ち着けて仏壇にお参りできる場所なら、基本的にどこでも問題ありません。
逆をいえば廊下や部屋の出入り口付近など、人の動きが激しい場所を避ければ大丈夫です。家族が集まるリビングや寝室、和室なら床の間などでも配置できます。ただし、仏壇の扉を開けるためにはそれなりのスペースが必要なので、そのことを忘れないよう注意が必要です。
仏壇の方角
仏壇をどこに置くべきかと考えて最終的に配置場所を決める時、気になるのが方角です。どの向きにするのが正しいのかというと、基本としては南向きか東向きがよいとされています。
南向きがよいとされるのは、古代中国から入ってきた考え方に基づいたとされる配置です。位の高い人は南の方角を向いて座したことから、南面北座説が生まれたといわれています。また、仏壇に強すぎる日差しが当たるのを避け、かつ、風通しのよい吉方だからとする説も。
このほかにも仏教の開祖である釈迦が、南を向いて説法をしていたのにならったとする説もあります。いずれにせよ、仏様を祀る仏壇が吉方を向くように配置するのが、南向きがよいとされる根拠です。
東向きがよいとされるのにも諸説あり、一説にはインドの影響といわれます。東は日が昇る方角であることから、立身出世を目指すものにとっては縁起のよい方角とされたのです。そのため吉方に向いて座るのがよいとされたといわれます。
もう一方で西にあるとされる極楽浄土に向いて拝むため、仏壇をあえて東向きに配置するようになったとする説も生まれました。
ほかでは宗派の総本山の方角こそ、仏壇を向けるのに最も適しているとする本山中心説や、それぞれの季節に意味を持たせ、対応した季節の向きに配置するのがよいとする春夏秋冬説などもあります。
ちなみに春(東)に始まり、夏(南)に実を結び、秋(西)に収穫を迎え、冬(北)に収めるという意味があるというので、気になる意味があるのであれば配置してみるのも一考です。
宗派でも異なる
仏壇の配置は宗派でも異なります。各宗派でも開祖の釈迦を中心に考え仏壇を配置する、信仰の対象そのものである仏様を中心にすえて仏壇を配置するといったほか、本山中心説にのっとる宗派や、そもそも仏壇の向きを定めていない宗派もあるのです。
一番間違いがないのは、菩提寺に行って確かめることでしょう。もしどうしてもその向きに仏壇を配置できないのであれば、どの宗派でもそこまで徹底しなくてもよいとするのが一般的です。一番大切なのは、仏壇に祀られた仏様やご先祖を敬う心といえます。
仏壇を配置するときの注意点
いくら家の中に仏壇を配置しやすい場所が思い当たらないからといって、ここには配置してはいけないという場所もあります。例えば水回りや玄関です。日当たりが悪くて湿気も多く、仏壇を傷めるだけでなく、手を合わせる場所としても適していません。
仏壇を傷めるという点では、西日が直接当たる場所も避けた方が無難です。仏壇が日焼けを起こして劣化しやすくなり、ひび割れなどの原因にもなります。
神棚との位置にも注意が必要です。神棚と仏壇は、同じ向きになるように配置しましょう。特に向かい合わせに配置するのは厳禁です。片方にお参りする時にもう片方には背を向けることになるため、神様にも仏様にも不敬に当たります。
仏壇はお参りの時に、中に祀られている仏様がお参りする人の目線よりもやや高めにくるよう配置してください。仏様を見下ろす形になるようでは、これも不敬に当たります。
しかし、そこまで厳密にしていたら配置場所が無くなってしまうのもまた事実です。あくまで目安として考え、まずは最も落ちついてお参りできる場所に優先して配置するなど、敬う気持ちを表しやすい場所に置くようにしましょう。
仏壇のお供え物の配置は?
仏壇内の仏具やお供え物の配置位置は、基本的に宗派での違いはありません。上段は仏様の座所、2段目にご先祖さまや故人の位牌を置きます。3段目に五具足(ごくそく)と呼ばれる花や線香などのお香、灯明を並べ、下段がお供え物を供える場所です。
浄土真宗だけは魂は浄土へと還ることから位牌がない、独特な仏壇の配置になりますが、宗教上の特徴のため問題ありません。
お供え物には種類があり、3段目の五具足も含まれます。この五具足のほかに「浄水」「飲食(おんじき)」があり、すべてを合わせて「五供(ごくう)」と呼ぶのが正式です。
中でも「浄水」と「飲食」はこまめに手をかけましょう。「飲食」にも物によって格があり、仏飯を筆頭に、お餅、お菓子、果物の順で重用されます。仏事の時にはまずは仏壇に「飲食」としてお供えし、お参りしてからお下がりとしていただくのが正式な作法です。
特に初物やいただき物といった特別なものは、先に仏壇に供えて感謝を伝え、それから改めていただきましょう。ただしそれらのお供え物は、直接下に置いてはいけません。必ず器などに盛りつけてからお供えするのがマナーです。
こちらも日々お供えするお香に当たる線香は、宗派によってお供えする本数が異なります。家族の人数によってはすぐに香炉が灰でいっぱいになってしまうため、特に本数にこだわらなくても大丈夫です。
ただし、線香に火をつけるのに使うろうそくを吹き消すのはマナー違反になります。手であおいで消すようにしてください。ろうそくの火の扱いを間違えると、時として火事の原因になることがあるため要注意です。電池式のろうそくを取り入れるのもよいでしょう。
お供え物のタブーは?
お供え物にも避けた方がよいものがあります。仏教では殺生をよしとしないため、連想させる肉や魚は避ける方が無難です。また、トゲがある、あるいは香りが強い供花もよいお供え物とはいえません。
ただし、それらのタブーであっても、故人が好きな食べ物や花であった場合には、お供えしてもよいとされています。トゲのある供花は、けがに注意してトゲを取り除いてからお供えしてください。
また、お供え物の種類によっては、仏壇の周辺を汚しかねないものもあります。そのようなお供え物は、半紙を敷いた高月にのせてお供えしたり、お皿の上にのせてお供えしたりすれば大丈夫です。
おわりに
仏壇はいざ一から配置するとなると、意外とわからないことだらけです。特に和室が減る中、仏壇の置き場所が少なくなっているのも原因といえます。しかし、仏様やご先祖を敬う気持ちがあれば、そこまで形式に縛られなくてよいのも事実です。
お供え物も形式にとらわれすぎる必要はありません。あくまで大切なのは心なので、もっと気軽に仏壇と向き合ってみてください。