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子育て
菅原さくら

【夫婦のチームワーク番外編】担当ライター・さくらが夫と対談してみました

子育て中の家族が楽しく暮らすには、家事や育児を上手に分担したり、お互いの仕事を励まし合ったり……夫婦の自然な支え合いが欠かせません。家事や育児を“自分ごと”として取り組む男性に、妻とのパートナーシップや家事・育児に対するスタンスについて伺います。

夫婦の“チームワーク”について、男性の視点からお話を聞かせてもらってきた本連載。
そもそもこの企画がはじまったのは、私自身が子育てや仕事について、夫の支えなくしては成り立たないと感じているから、でした。同じように助け合っている夫婦のお話を聞いて、普遍的なヒントを見つけ、出産や育児を不安に思っている人たちに届けたい、と思っています。

そこで今回は編集部のみさきちゃんを進行役に迎え、企画のヒントになった我が家の夫・裕信(ゆうじん)にインタビュー。妊娠時から現在に至るまで、どんな気持ちで家族と向き合っているのか。1歳7ヶ月の息子をどんなふうに育てているのかを、ざっくばらんに話してみました。

【Couple’s DATE】
平田裕信(29歳)建築設計事務所 勤務/さくら(30歳)フリーランス ライター
 

大学サークルの先輩・後輩から6年間交際ののち、2013年に結婚。それぞれ仕事が楽しくて、ついやりすぎてしまう。

 

人生経験としておすすめの『妊婦検診』

――大学時代からお付き合いを始め、結婚して3年で妊娠。その前後はどんなことを考えていたんですか?

裕信:お互いにバリバリ仕事をしていたし、二人でいるのも充分楽しかったので、ものすごく積極的に子どもを作ろうと思っていたわけではありませんでした。でも、ある程度は仕事の感覚もわかり、夫婦の関係も落ち着いていて……そろそろ子育てという次のフェーズにいってみようと、二人で同じタイミングに感じていたような気がしています。

実際に妊娠してからは、僕はひたすらサポート。つわりもほとんどなく順調でしたが、やっぱり体がしんどそうで……だからできるだけ毎日、頭や腰のマッサージをしてあげていました。あと、仕事はどうしても本人がやらなくちゃいけないから、代わりにできる家事はだいたい僕がやるようにしていましたね。

さくら:妊婦検診もほぼ毎回付き添ってくれたよね。大きな病院に通っていたから待ち時間が長くて、退屈だったので助かりました(笑)。結果的にエコーを見るくらいしか男性のすることはなかったけど、初めての妊娠の経過を共有できたのはよかったと思う。

裕信:うん、人生経験として面白かった。検診の日は二人でおいしいものを食べに行くって決めてたから、それも楽しみだったな。子どもが生まれたら行けないお店も出てくるだろうから、最後にランチデートをたくさんしておこうと思ったんですよね。

 

仕事も子育ても、持続的に楽しむための仕組み

――産前産後で生活が変わることについては、話し合いなどしていましたか。

裕信:生活が変わる不安はもちろんあったけれど、いままでもうまくいっていたし、産後もなんとか工夫してやっていけるんじゃないかな、と思っていました。ただ、さくらさんはフリーランスだから、産休も育休もない。そんな状況で、お互いにやりたい仕事を続けていくためにはどうすればいいか、という話し合いはたくさんしていましたね。ベビーシッターを頼むとか、母に助っ人をお願いするとか、いろいろプランを考えたりして。

――たとえばそのために、育児休暇などは取得したんですか?

裕信:さくらさんが産院を退院してくる日から、1週間だけ取りました。2ヶ月休んだりもできたけれど、その前後に仕事のしわ寄せがいったら意味がない。最初だけ長期休暇をとるよりも、ずっと定時で帰ってくるほうが、持続的に子育てができるという話になったんです。

だから、まずは育児の慣らし運転のために1週間休む。それ以降は普通に出社して、毎日20時目標で帰宅することにしました。それまで好きなだけ仕事をしていたので時間のやりくりは大変ですが、なんとか凝縮してやってますね。

さくら:1歳からは保育園に行き始めたので、朝も彼が担当してくれています。おかげで、私の出かける時間が遅いときは、すこし朝寝坊できるようになりました。ちゃんと睡眠をとらないとすぐに体調を崩すタイプなので、バリバリ働いているとか言うわりにはよく寝てます。

裕信:僕が朝番でさくらさんが夜番の、完全分業制なんです(笑)。朝は僕が息子と一緒に起きて、朝ごはんを食べさせて、保育園に連れて行く。さくらさんは夕方迎えに行って、晩ごはんを食べさせて、お風呂に入れる。で、毎日「朝はありがとう」「晩ごはんありがとう」ってお礼を言い合ってます。

▲ピンク色が育児のタスク。夫・裕信は朝に、妻・さくらは夜に集中している。

――分業制なら相手がやって当たり前なのに、お礼を言うんですね!

裕信:そうですね(笑)。それぞれのタスクにはなっているけれど、やってくれることを当たり前とは思っていません。それに、朝ごはんはパンやバナナなど簡単に用意できるものばかりだけど、夜はちゃんと栄養バランスを考えて作ってくれてるし、お風呂に入れるのも結構疲れる。だから、朝番より夜番のほうが負担が大きいんじゃないかと思うんですよね。

お互いにいい精神状態でいられるように、育児のタスクは完全に50:50にすることを心がけているんです。それでも、やっぱりさくらさんのほうがちょっと多くやってくれてる気がするから、自然と「ありがとう」になるのかな。

さくら:私は、私のほうがちょっと少ないような気がしてる。感謝を忘れないというより、お互いに負い目を感じてるってことなのかな?(笑)でも、お互いに相手のほうが多くやってくれていると思ってるから、うまくいくのかもしれないですね。

 

丁寧なコミュニケーションで強いチームになる

――子どもが生まれると、妻の関心は子どもにばかり……みたいな話をよく聞きますが、お二人は夫婦でしっかりと向き合っていますね。夫婦の関係は、産前産後で変わりましたか。

さくら:産まれる前からよく「男の子は小さな恋人になるよ」って言われましたが、全然そんなことはないですね。もちろん息子はかわいいけれど、恋人は夫だけです(笑)。

裕信:結婚から出産までは“恋人”の延長。でも出産してからは、ちゃんと“夫婦”になったような気がしています。結婚式で誓った「病めるときもすこやかなるときも……」みたいに、どんなときも助け合う意識が強くなったというか。やっぱり、子どもが生まれてチームになったんでしょうね。

たとえばどこかに出かけるとき、まずは息子を着替えさせて、次にお出かけグッズを準備しようと考えます。でも、実際は僕が息子を着替えさせてる間に、さくらさんがお出かけグッズを用意してくれている。同じTodoが頭に浮かんでいて、どっちが先にやるかだけの話になっているのは、チームワークだなと思います。

さくら:子どもが生まれるまでは個人プレーだったから、仲が良くてもチームワークを発揮するような場面はなかったんですよね。私の母親は四柱推命の鑑定士なんですが、夫とは「ビジネスパートナーとして相性がいい」って言われたことがあって。それを、子育てという共同プロジェクトを運営していくなかで、本当に感じます。

裕信:さくらさんが里帰りをしなかったのも大きいですね。スタートが完全に同じだったから、育児レベルに差がつかず、一緒に試行錯誤しながらやってこれたと思います。寝かしつけに苦労した日には「お昼寝が足りなかったから?」「もっと外遊びをすべきだったかもしれない」などと生活を振り返り、反省を次に活かす、PDCAを回したりして(笑)。

さくら:子育てはすごく大変だけど、やっぱり面白いですよね。せっかく子どもを授かったからには、夫婦でフルに参加しないともったいないくらいのダイナミズムがある。50:50で一緒にやってくれる夫に対して「よくできた人だな」という感謝はもちろんあるけれど、「こんなに面白いことを独り占めするのもなんだから、一緒にやろうよ」という気もする。一緒に面白がりながら子育てできているのは、しあわせなことだなと思います。

裕信:うん、面白いよね。イライラすることもいっぱいあるけど、写真とか動画を撮ると、いずれこれも思い出になると思える。初めて息子が牛乳をこぼした瞬間も、すぐカメラを構えたら、イライラが一気になくなりました(笑)。あと、さくらさんが出かけてるときに芸を仕込むのもいっときブームだったな。

さくら:仕事に出かけて帰ってきたら、技が増えてて面白かった。最近は「すしざんまい」で手をたたいて広げる、っていう芸を仕込んでるね。

――そういう小さな楽しみを見つけたり、素直に「ありがとう」を伝えることが、二人で子育てを楽しむコツかもしれないですね。

裕信:18歳くらいで付き合い始めたばかりのとき、さくらさんに「言いたいことはちゃんと言い合って、建設的なケンカをしよう」って言われたんです。それまでは、ケンカをするくらいなら黙って我慢したほうがいいと思ってたんだけど、それからはちゃんと言うようになった。

その延長で「ありがとう」とか「大好き」とかも言葉にするようになったんだと思います。それでお互いに悪いところを直して、いいところを伸ばしてきた10年間の積み重ねが、いまなんですよね。ここからは子どもも一緒にコミュニケーションを積み重ねて、家族でいい関係がつくっていけたらと思っています。

▲息子が好きな「はらぺこあおむし」を読み聞かせる、週末のゆったりとした時間。

撮影:池田博美
グラフ作図:田久保智子