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子育て
菅原さくら

中尾明慶さん/お互いの価値観を尊重して、僕たちならではの“家族”になる【夫婦のチームワーク vol.4】

子役からキャリアをスタートし、さまざまなドラマや映画で活躍を続けている俳優・中尾明慶さん。4年前に結婚し、現在は一児の父親として子育てに奮闘中。Instagramからも、家族の仲むつまじい様子がうかがえます。

大変な瞬間を共有することで、あとから何度でも感謝がよみがえる

――結婚して4年。SNSでの楽しげな様子からも「ラブラブ」「イクメン」といったイメージが定着していますね。

ありがたいことに、こういう取材を受けさせていただく機会も増えています。でも、そんなに言っていただくほどなのかな……インスタでそう見えるのかも? もちろん仲は良いけど、べつに普通だと思いますよ(笑)。

▲中尾さんのInstagram(@akiyoshi0630nakao)。近ごろは、宇宙人のように顔を加工するストーリー動画も大人気。

イクメンと呼ばれるのもありがたいけれど、僕なんかより育児している男性もたくさんいると思っています。
そもそも僕ら男性は、育児についてどうしても女性よりスタートが遅れるんですよね。妊娠してお腹が大きくなるわけでもないし、おっぱいが出るわけでもない。何がなんだかよくわからないまま、子育てが始まっちゃうんです。だから、とまどって何もできない男性側の気持ちも、すごくよくわかります。

僕は出産にも立ち会いましたが、本当に男はなんにもできないですよね。目の前で奥さんが苦しんでいて、本当に死んじゃうんじゃないかと思いましたもん。だからあわてて先生を呼びに行ってるのに、先生も、廊下で待っているお互いの母親も経験者だから、みんなけろっとしている。俺だけがぶるぶる震えて焦ってるんです(笑)。
寝返りも自由に打てないような妊娠期間を越えて、しんどいのを耐えて耐えて、最後にあんな大仕事が待ってるんだから、本当に女性はすごい。こんな思いをして産んでくれてありがとうって、心底思いました。

めっちゃ大変だったけど、立ち会ってよかったです。やっぱり、大変な瞬間は二人で経験しておいたほうがいい。陣痛も終盤のとき、背中をさすってあげていたら、僕が飲んでいたコーヒーのにおいで彼女が気持ち悪くなっちゃったんですよ。だから、急いでその場にあったパイナップルを口にばくばく詰め込んで、コーヒーのにおいを消して……あのときは必死だったけど、いま振り返れば笑い話です(笑)。
でも、そういう経験や思い出も、共有できたのがよかったなと思っています。たとえばケンカをしたときにも、あのときのことを思い出すと優しくなれるというか、感謝がよみがえりますから。

――そんな立ち会い出産を経て、子育てがスタート。初期のころは、どんなふうに関わっていましたか。

我が子はかわいいし愛しいけど……でも、これは一体どうしたらいいんだっていうのが正直なところ。おむつ替えも沐浴も慣れないし、赤ちゃんだからもちろん泣くし、最初はすこし腰が引けていました。初めて2人っきりで留守番した日なんて僕、翌日に熱を出しちゃったんですよ。それでも、わからないなりにやるわけです。
いまは息子も体力がついてきて、父親しかできないような遊びも増えてきたから、ようやく気が楽になってきました。でもいま振り返ってみれば、子どもはあっという間に大きくなるから……とまどいながらも世話していたあの時間を、もっともっと大事にしておけばよかったなって思います。

 

夫婦であり恋人であり友人であるから、仲良くやれる

――ご夫婦お二人ともお忙しいなか、家のタスクはどのように分担されてるんでしょうか。

育児も家事も、どこかフェアでありたいとは思っています。だから洗濯物をたたんだり、保育園に送って行ったり、できることは自主的にやるようにはしているけれど、割合的には妻が70で僕が30というところ。やっぱり、しっかりしている彼女に比べて、僕は細かいところまで気が回らないんですよね。
とくに掃除はなかなか手がつけられなくて……「結婚してから、掃除機何回かけたことある?」って聞かれたとき、なんとなく思い出せるほどの回数だったりして(笑)。向こうが忙しそうにしているときはちゃんとできるんだけど、お互いに休みの日だとつい相手に甘えちゃうんです。
でも、そろそろやらないと相手がイライラしちゃうだろうなとか、さすがに負担をかけすぎてるなっていう“やばいタイミング”はちゃんとわかる。末っ子特有のセンサーがあるのかもしれません(笑)。ずる賢いだけといえばそうなんだけど、相手が怒る前にはきちんとアクションできるから、波風は立たずに済んでいます。

僕に至らないところがあっても仲良くやれているのは、子育てしながらも、二人の時間をちゃんと取っているからかもしれないですね。相手がしたいことに参加するのが、僕らのルール。相手の買い物とか観たい映画に乗っかるのって、意外と楽しいんですよ。
僕はアウトドアが好きでよく山に行くんだけど、彼女もついてきてくれたりして。夫婦であり恋人であり友人であり、いろんな要素があるから面白い関係だなって思っています。

 

してくれたことにフォーカスを当てて、お互いに支え合える関係を

――まずは、お互いへの愛情ありき。だからこそ、そのうえに積み上げていく家庭づくりがうまくいくのかもしれませんね。

結婚したとき、ある方からいただいたお祝いに「お互いに求めすぎるな」ってメッセージが書いてあったんです。本当にそうだなって思う。相手がやっていないことに注目するんじゃなくて、やってくれたことにフォーカスを当てるだけで、関係ってずいぶん変わってくるんですよね。
何かを求めるのって、結局は自分の物差しでしかなくて……生きてきた背景が違うんだから、相手が何を求めているかなんて察することは難しいんだし。

チームワークでいうなら、チームメイトがミスしたときに「どんまい」って言えなきゃ、チームじゃないでしょう。そこで責めるようなチームは最悪だし、絶対勝ちはないじゃないですか。僕はいつも「どんまい」って言われる側だし、たまにはうちの人にも言ってみたいけど(笑)、でも夫婦ってそういうものじゃないかなって思ってます。
自分とまったく同じ価値観の人なんて、絶対にいない。それでも家族になったんだから、自分たちの価値観を――どっちかの基準やルールじゃなくて、僕たちの新しいものを、作っていけたらいいですよね。

▲息子さんがお気に入りのストライダーと。

中尾明慶

俳優。1988年生まれ。東京都出身。ドラマ『ママまっしぐら!』(00)で子役デビュー。その後、映像・舞台など幅広く活躍。日本テレビBS笑点ドラマスペシャル『桂歌丸』が10月9日(月・祝)19:00より放送予定、映画『リンキング・ラブ』が10月28日(土)より丸の内TOEI2ほか全国ロードショー予定。

撮影:NORI