- 馬場吉成
- webライター。100kmマグロ担いで走ったり、色々なものを発酵させたり。 日本酒、料理、体力系記事など色々書いてます。製造業を中心に企業向けの記事も色々書いています。 利き酒師で、元機械設計屋で元プロボクサー。ウルトラマラソン走ります。 米の飯と日本酒が有れば大体なんとかなります。
▼ 個人サイトはこちら。 「走れば大体大丈夫!」 http://by-w.info/
▼ ライター以外に日本酒と発酵食品をメインにした飲み屋も経営しています。 「酒と醸し料理BY」 http://kamoshi-by.tokyo/
ホームセンターで入手出来る物で火を使わずアウトドアで燗酒にする方法
寒い冬の公園。温かい日本酒が飲みたくなる季節。火を使わずにアウトドアで日本酒を燗酒に出来たらなんと素晴らしいことでしょう。それが出来るのです。ホームセンターで売っている簡単な道具を使って。
それはある冬の日の午後の話
とある冬の休日。日本酒をこよなく愛するBさん(40代自営業)は公園に来ました。
Bさんは公園のテーブルで持参した日本酒を飲み始めました。
「いやー、公園で飲む日本酒はうまいなー」
「でも、この日本酒は冷や(常温)だ。こんな寒い日はやはり燗酒だよなー」
「燗酒飲みたいなー。でも火を使えない公園じゃお湯を沸かして温めるなんてできないし、道具もない。燗酒・・・」
「そこの君!燗酒が飲みたいのかね?」
「あ、あなたは!」
「通りすがりの居酒屋店主だ!」
「どうしてもこんな場所で燗酒が飲みたいならばこれを使うといい!」
ホームセンターで売っている小型の万力!
綿ロープ!
カクテルを作る時に使うステンレス製スイングメジャーカップ!
「これでどうしろと?」
「摩擦熱を使え!」
摩擦熱でお湯が沸きます
物を強くこすり合わせると、こすり合わせた面が熱くなってきます。摩擦熱によるものです。こちらのサイトをご覧ください。
「NGKサイエンスサイト」 ひもで湯をわかす!?(摩擦熱)
細いパイプに入れた水が、巻きつけた紐でこする事により短時間で沸騰して噴出しています。この原理をつかって日本酒を加熱して燗酒にします。
まずはセッティング。
万力を台に固定し、スイングメジャーカップ(30mlサイズ)に日本酒を注ぎ入れます。
日本酒を入れたメジャーカップを、万力で動かないように固定します。その際、ホームセンターで売っていたテーブルなどの足にはめるゴムキャップを切り開き、滑り止めとして周りに巻いています。
メジャーカップにロープを巻きつけます。あとはロープを左右に引き、メジャーカップをこすり続けて加熱していきます。
こんな感じです。
こうやって地味に加熱を続けます。
体温も上昇する燗付け作業
スタート時の日本酒の温度はこちら。
14.0度
日本酒は瓶ごと室内に置いておいたもの。常温の日本酒です。この日は冬としては比較的暖かかったので、14度からのスタート。
摩擦し続ける事約1分。温度を測ってみました。
19.6度
温度が上がっています。このまま続けていきます。そして、3分近くこすり続けた結果。
35.1度
35度台まであがりました。ちなみに、日本酒は温度により呼び方が変わります。
- 30℃前後 日向燗
- 35℃前後 人肌燗
- 40℃前後 ぬる燗
- 45℃前後 上燗
- 50℃前後 熱燗
- 55℃前後 飛切燗
現在人肌レベル。もう少し摩擦を続け、ぬる燗から上燗ぐらいまではもっていきたい。
燗酒を飲んでもいないのに、体が温まってきました。
激しく動いているから当然か。
そして、合計4分ほど摩擦を続けた結果。
43.8度。
いい感じに燗酒になりました。
飲んでみましょう。
「あったけー!燗酒うまいね。やったよ、マスター!燗酒になったよ!」
摩擦による燗酒化に成功しました。温かく、柔らかく香る日本酒の香り。炙ったイカでも欲しくなる味です。
しかし、飲むと何か口の中にザラつく感じがあります。何かと思えば原因はこちら。
摩擦によりロープから発生するホコリや、固定用に使ったゴムがロープとすれて発生するクズ
が日本酒に混入してしまいました。これはいけない。
原理は良かったのですが、構造に問題がありました。さて、どうしたものか。
「マスター、何か手はないでしょうか!」
もっと便利なアウトドア燗酒用の道具がある
「ならばいいものがある!これを使うのだ!」
「そ、それは!」
「THERMOSの真空断熱携帯マグだ!」
「これを使えば、お湯を68度以上6時間保温可能。この中の湯を使え!」
「お湯を持参しているなら先にそっち出せよ!」
「細かい事は気にするな!さあ、温めろ!」
とんだ茶番にここまで付き合っていただき、ありがとうございます。
というわけで、便利な真空断熱携帯マグで持ってきた熱湯で燗をつけます。
これまた持参した器に熱湯を注ぎ入れ、メジャーカップに入れた日本酒を入れれば燗付け開始。
1分も経たぬうちに、汗をかくことも無く日本酒は42度を超えました。
燗付け完了。
「燗酒うまいねー。お湯あると楽だ。」
当たり前ですが、お湯があると摩擦熱で加熱するよりも圧倒的に早く楽に燗ができます。しかもホコリの混入もなく、燗酒の味わいを損ないません。
しかし、あえて摩擦熱で燗にする利点を挙げるとするならば、お湯のように冷めることが無く何度も燗酒を作る事が出来る事。
電池で動く何かで摩擦し続ける事が出来るような機械があり、ホコリが入らないように摩擦する部分が隠れているような構造の物なら使えるかもしれません。
もっとも、写真のようなサイズの大きい断熱携帯ポットがあり、これを使えば2、3合ぐらいは燗に出来ます。外で沢山燗酒を飲みたい方にはこちらがオススメでしょう。
では、みなさん。今夜もよい日本酒を!