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藤岡みなみ|夏が終わったら外に出たいという話

藤岡みなみ|夏が終わったら外に出たいという話

今年の夏も暑すぎた。

今年の夏も暑すぎた。

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藤岡みなみ
1文筆家。暮らしの中の異文化をテーマにした『パンダのうんこはいい匂い』
(左右社)が発売中。
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夏が終わったら外に出たいという話

今年の夏も暑すぎた。

北海道ですら気温が40度近くまで上がる日があり、いよいよ逃げ場がない感じがした。

子どもの頃は、夏といえばアウトドアだぜ!と思っていたのだが、近年はいかに屋内に閉じこもるかということばかり考えている。

こんなに太陽がいきいきと輝いているのに、それがすっかり人間にとって心地のいいものではなくなってしまった。

長い長い夏の間、外に出たいという気持ちをずっと燻らせてきた。

秋になったら大至急その思いを爆発させたい。

ピクニック! バーベキュー! 焚き火! キャンプ! 待ってました!

アウトドア活動は、DIYの最大の実践場だと思う。

普段のDIY力を臨機応変に活用することが求められる。

例えば、ピクニックは決してのほほんと平和な営みではない。

予想外の強風にレジャーシートをあおられ、ダッシュで重しになるちょうどいい石を探してこなければならない。

ピクニックで映え写真を撮っている人たちは、すました顔をしているがとんでもない上級者だ。

私も一度、ものすごく気合いを入れたピクニックを開催したことがある。

わざわざシートの上に敷くいい感じの布、あまり機能的ではないバスケット、紙コップではなくガラスコップなどを準備した。

食べ物は友人と3人で打ち合わせをせずに持ち寄ったが、それぞれ持ってきたのが焼き鳥、フライドチキン、唐揚げだったため、思いがけず鶏パーティになった。カメラを向けたが、全体的にとても茶色かった。

準備して食べて片付けるというそれだけのことなのだが、想像以上に体力を使いその日はよく眠れた。

タイパ・コスパの逆をいく豊かな行動だ。

バーベキューではしゃぎすぎてはいけない。

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▲ 外でパンを食べるだけでもアウトドア

以前、バーベキューで食材を準備しているときにざっくりと指を切ったことがある。

一瞬でテンションが急降下した。

外の空気を感じながら、慣れない環境で肉を焼く。

開始早々怪我をした私はまだまだ修行が足りなかったようだ。

バーベキューではプリミティブな生命力が試されるのだ。

はしゃいでいる場合ではない。

今後もバーベキューでコツコツと人間力を上げていきたい。

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▲ バーベキューで試される人間力

キャンプ、それは外でだらだらすること

キャンプなんかは体力のあり余っている人のすることだと思っていたが、あるときキャンプ好きの人に話を聞いて考え方が変わった。

キャンプの醍醐味はごろごろすることなのだという。

家の中でごろごろすると罪悪感があるし、なにもしないというのも逆に疲れる。

そんな時は、漫画やゲーム、おやつやジュースを持ち込んでテントに籠ればいい。

最近は組み立ても限りなく簡単なテントが売られている。

アウトドアでインドアをする、それがキャンプなのだと聞いたとき、それなら私にもできそうだと思った。

気力があればその場で出会った落ち葉や枯れ枝を組み合わせて、その場限りのオーナメントを作ってみるのもいい。

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▲ 臨機応変に自然と遊ぶ

臨機応変さを楽しむ創作だ。

あるいは、火だけを目的にするのもいいだろう。

食べるのでもごろごろするのでもなく、火をつけて眺める。

毎日台所で火を使っているけれど、しみじみ見つめることはほとんどない。

だからたまに、火ってこんなんだったなぁと確かめにいく。

人間って、火を見つけたんだよなぁ。

火をつけるのって面倒なんだよなぁ。

焚き火をするたび、かなり初歩的な感想が湧き上がってくる。

でもそれはたしかに世界の再発見だ。

ときおり火の概念を確認すること、それはDIYの原点といえるかもしれない。

さあ、アウトドアのイメージトレーニングは万全だ。

また次の長い夏がきてしまう前に、できれば野外活動に勤しみたい。

アウトドアでは自分の本当のDIY力がわかる。

どんなにへなちょこだってかまわない。

不器用なほど、発見の回数も多いのでお得なのである。

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▲ 火を見る活動、それが焚き火