お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。
インタビュー
菅原さくら

犬山紙子さん/コミュニケーションの積み重ねが、強い関係を作る【夫婦のチームワーク】|剱樹人さんの“B面”

家事や育児は“自分ごと”――そんな男性にインタビューする連載『夫婦のチームワーク』。7月公開のvol.1には、漫画家/ベーシストの劔樹人さんに登場してもらいました。その記事を読んで、妻でエッセイストの犬山紙子さんはどう感じたのでしょう。今回は、夫の姿やパートナーシップについて妻の考えを聞く、いわば連載の“B面”です。

「イクメン」や「手伝い」ではない、当たり前に「一緒に育てる」という感覚

――まずは、劔樹人さんのインタビューを読んだ感想を聞かせてください。

そうですね……普段からよく話していることをまとめていただいた、という感じ。夫婦間でのギャップは感じませんでした。

――では犬山さんから見て、産前産後の劔さんはいかがでしたか?

産前も産後もパーフェクトですね。正直まじで最高でした。って、なんかちょっと上から目線な言い方になっちゃいましたけど(笑)、すごく感謝しています。

まず、妊娠中。私は空腹になると気持ちが悪くなってしまう、いわゆる「食べづわり」だったので、つるちゃん(劔さん)が毎朝せっせと大量のりんごをむいて、タッパーに入れて持たせてくれました。

妊娠してから顔や腕が太ってしまい、私自身がなかなか受け入れられなかった体型の変化にも、ふれずにそっとしておいてくれたり。妊娠しているあいだ、つるちゃんと一緒にいるときにしんどい思いをしたことなんてほとんどないくらい、完全にサポートしてくれました。

産後7ヶ月のいまも、本当に心強いパートナーだと感じています。たとえば夜中のお世話。私が1ヶ月前にぎっくり腰をしてから、なんやかんやでずっと体調が悪いため、私は授乳だけであとはつるちゃんがやってくれるんです。娘が直接母乳を飲むのをいやがった時期は、哺乳瓶を使っていたので、授乳も交代制にできました。

一回の授乳に1時間もかかっていたけれど、きっちり分担したからお互いにちゃんと睡眠時間も確保できて、精神的にすごく安定していた気がします。「代わるよ」って言うと、つるちゃんはいつも「もうちょっと寝てなよ」と言ってくれて、その優しさにも支えられましたね。

 

つるちゃんは「イクメン」とか「手伝う」とかそういう気持ちじゃなくて、親として子どもを一緒に育てていくという感覚を、当たり前に持っていてくれる。「大好きな夫」にくわえて、自分の子どもを一緒に守る「頼りがいのある戦友」にもなったから、ぐんと愛情が増えました。

嘘っぽくなっちゃうけど、本当に夫への愚痴がないんですよ。でもそれは、いい関係性でやっていくために、意識してコミュニケーションを取っていた結果だと思っています。
 
――なるほど。産後も危機に陥ることなく、夫婦で同じ方向を向くために、どんなコミュニケーションを心がけていたのでしょうか。

言いたいことをちゃんと伝えて我慢しないとか、お互いのメンタルを思いやるとか、基本的には産前から変わらないことです。でもつるちゃんって、言いたいことをつい我慢してしまううえに、自分が我慢していることにも気づかないんですよ。結婚したてくらいの頃は、心配して声をかけても「大丈夫」と返されて、私もそれを真に受けていたんだけど……

いまは客観的に見て「ちょっと働き過ぎじゃない?」とか「ホラ、休んで休んで」って指摘するようにしています。本人が気づいていないしんどさは、おおごとになる前に私が芽を摘んでおきたいから。いまはそうやって、お互い「相手は大丈夫かな」という気持ちをベースにして暮らしているように思います。

……って、こんな偉そうなことを言ってるけど、付き合い始めたときの私は超ワガママでした(笑)。もともと自分本位だからつるちゃんの優しさにばかり甘えて、遊びに来た彼に「洗濯してよ~」とか言ったりして。

 

いい関係を続けるために、お互い納得できる仕組みを

――結婚前の超ワガママから、いまのように負担を分け合うような、お互いを思いやる関係性が築けるまでに、何かきっかけがあったんですか?

半同棲の生活から、きちんと一緒に暮らし始めたことが、ひとつのタイミングになりました。このままいったらやばいというか……私はつるちゃんとの暮らしにまったく不満はなかったけれど、つるちゃんは言わないだけで何かあるんじゃないかと。

いろんな方に話を聞くと、離婚の原因ってコミュニケーション不足が多いでしょう。せっかくすごく好きな人と結婚できたんだから、私はできるだけ離婚したくない。だから、いままでみたいにワガママ放題じゃだめだし、もっとコミュニケーションをしっかり取らなくちゃって思ったんです。

たぶん、つるちゃんがあまりにもいい奴だから、私の性格も引っ張られたんですよね。聖人の隣にいると浄化されるというか……“自分勝手でワガママな私”っていうのが、すごくレベルが低い気がして、変わろうと思いました。

 

そこでまず、2人が納得できるフェアな関係について考えたんです。たとえば私は、家事がイヤでイヤで仕方ない。でも、人って絶対イヤなこととか苦手なことがあるじゃないですか。私が無理に家事をすることでいろんな作業の効率を落とすんだったら、家事を嫌いじゃないつるちゃんにやってもらったほうがいい。そのぶん私は別の部分を負担して、結果うまく回っていくのが一番いいと思ったんです。それで、いまのように家事や家計を分担する仕組みができていきました。
 
――それが、前回記事で劔さんも話してくださった、2人のベストな役割分担につながったんですね。結婚をして、まずそういう下地を作れていたから、妊娠・出産にも踏み切れたことと思います。

そうですね。でも、子どもが生まれてからの仕組み作りは、まだ模索しているところ。いままでは単純に、お互いが得意なところをやる“役割分担”だったけれど、子どもがいると不確定要素が多すぎて、そうもいきません。

私とつるちゃんがひとつのチームとして、体力をうまく分配していかなきゃいけないんですよね。だから、声のかけ方や負担の分け方、アウトソーシングするところも含め、試行錯誤しながらもまだまだ居心地をよくしていきたいと思っています。

 

▲授乳クッションの上に置いて、赤ちゃんの頭の位置を微調整しているというクッション。「娘の頭をはめると、クロワッサンのアフロみたいになる。かわいいし便利だし、ふわふわでめっちゃ最高なんです」(犬山さん)

 

課題を解決するための、丁寧なコミュニケーション

――夫婦が育児のチームとしてよりよく機能するには、どんなことに心がけるとよさそうでしょうか。

そうですね……話し合いのゴールを「課題解決」にして、2人で考えることでしょうか。一般的に、男性が育休や時短勤務を活用することに対して、やっぱりまだ世間の風当たりは強いと思います。子どもが生まれたからといって、毎日18時には帰れない事実がある。

でも、そこで「俺は育児する時間がないから、君がやってね」じゃ、何も解決していない。働いている自分ができないぶんの家事を外注するとか、区の支援サービスを調べるとか、少しでもパートナーの負担を減らすためにできることって、きっとあるはずなんです。自分が手を動かす余裕がないなら、すこしくらいお金をかけたっていい。先を見据えて、どちらかに負担がかかりすぎないように使うお金は、たとえいっとき赤字になっても必要経費だと思っています。
 
――いわゆる“ワンオペ育児”が怖くて妊娠をためらったり、2人目出産に踏み切れない、という声はしばしば聞きますね。その解決方法を、さまざまな角度から2人で考えるのは、とても有効な気がします。

私も妊娠・出産に際して、たくさんの不安がありました。「たぶん保育園に入れないから、産んだあとの仕事はどうしよう」とか「ホルモンのバランスが崩れて、産後クライシスになっちゃうのかも」とか……でも、そういうネガティブな予想もちゃんと夫と共有して、話し合いができていました。チームとしていい方向に進めるように、前提知識をしっかり持っておけたのはよかったなと思っています。

ネガティブな話にかかわらず、本当はもっとたくさん生の声を聞きたい。でも、妊娠・出産・育児に関するポジティブな情報って、あんまり出てこないんですよね。のろけに聞こえちゃうからなのかな……でも、何もしないですべてがうまくいくことなんてないと思う。

きっと努力をしている結果、うまくいってるんだろうから、そういう人たちの工夫がもっと知れたらいいですね。ネガティブもポジティブもたくさんの情報を取り込んだうえで、自分たちに最適なやり方を考えられたら一番いいなって思います。

 

犬山さんが自身の悩みもふまえて、さまざまなルートの“経験者”に話を聞いた『私、子ども欲しいかもしれない。』(平凡社)。妊娠・出産のリアルを並べて、自分の答えを導き出すための背中を押してくれる

撮影:NORI

犬山紙子

コラムニスト、イラストエッセイスト。ニート時代に出会った“美人なのに恋愛下手な友人たち”を描いたブログを書籍化した『負け美女』(マガジンハウス)でデビュー。近著に『言ってはいけないクソバイス』(ポプラ社)、『私、子ども欲しいかもしれない。』(平凡社)など。テレビやラジオでも活躍。2017年に長女を出産。
 
公式ブログ